ソウル中央地検は10月19日、韓国ロッテグループに大ナタを振るった。背任や横領容疑などでロッテグループの創業者一族3人をはじめ幹部を18人、在宅起訴した。逮捕者なども含めると総勢で24人が起訴された。今年5月から100人以上の捜査員を導入して行われた韓国史上でも最大級の経済事件はその舞台を法廷へと移すことになった。

韓国第5位の財閥を相手になぜソウル中央地検はこれほど大掛かりな捜査を進めたのか。さらに、その後、韓国の朴槿恵大統領の親友とされる崔順実(チェスンシル)ゲートと呼ばれる、現職大統領と韓国財閥を巻き込んだ韓国憲政史上最大の政治経済スキャンダルが浮上。崔順実氏の関連する財団に資金を提供していたとして韓国ロッテや重光昭夫会長の名前が取りざたされている。

今後日本ロッテホールディンスも含めて、ロッテグループはどうなっていくのだろうか。韓国に飛び、日本ロッテホールディングス元副会長で創業者の長男、重光宏之氏に話を聞いた。(後編/全2回)

違法行為をしても利益を出そうとする体質

――これから先、韓国ロッテグループはどのような展開になると思いますか。
重光宏之・ロッテホールディングス前副会長

韓国ロッテとしては、ロッテホテルを上場してその資金で経営の立て直しをやっていこうとしていたのですが、ロッテホテルの上場が今回の疑惑・事件をきっかけにしてかなり難しくなったのが実態だと思います。現実に、上場の計画は白紙に戻っています。

現経営陣はいまだに上場ありきで進めようとしていますが、本来ならば信頼回復が先でしょう。ロッテショッピングでの粉飾決算も明らかになっていますし、投資家・アナリストからの信頼回復がなく、現在のように経営トップが何度も家宅捜索を受けて何時逮捕されるか分からない状況では上場などできるわけがないと思います。

――経営戦略はかなり見直ししなければならなくなる。これからどうなるのか。

現経営陣は、父の経営と全く逆の経営をやっている。父は戦後の創業時からこれまで周りの会社が無理して拡大して倒産するようなケースを見てきた。そうして潰れた会社の社員が路頭に迷っているのを見てきたので、会社をつぶすことは悪いこと、だから無理をしない範囲で成長させる、これを徹底してきた。

一方で、弟の経営は無理して背伸びをして、しかも本業とは関係のない分野やリスクの高い分野にもとにかく投資をする。例えば中国です。中国では、ショッピングモール、大規模住宅開発やオフィスビルなど大型開発案件に莫大な金額を投資してきた。しかし、それが大きな損失につながっているし、それを父に正確に報告していなかったことが露見したことが、今回の経営権問題の発端になっています。

それから、やはり極端に短期利益を志向するのも改めないといけません。弟の経営では各部門の責任者の社長の平均在籍期間は3年程度しかありません。とにかく短期的に成果を出せなければすぐに人をすげ替えます。ひたすら短期的な結果ばかりを追求する経営に徹した。それが韓国ロッテにおいて、ときには違法行為をやっても利益を出そうとする体質を生んでしまった。