創業一族に背任・横領・脱税疑惑

ソウル中央地検は10月19日、韓国ロッテグループ会長の重光昭夫(韓国名:辛東彬=シン・ドンビン)氏を在宅のまま起訴した。韓国ロッテナンバー2のイ・インウォンが自殺したことで、捜査は一時、暗礁に乗り上げたが、今後は法廷で事件の全貌が解明されることになる。

地元紙の報道などによると、昭夫氏は親族3人に不当に利益を与えたという横領の疑いがあるほか、グループの映画館の売店の独占運営権を親族の企業に与えたり、赤字が続くATM関連企業「ロッテPSネット」にグループ会社を資本参加させて損失を与えた背任の疑いがあるという。地検は9月に昭夫氏の逮捕状を請求したが、裁判所から棄却された。

グループ創業者の重光武雄(韓国名:辛格浩=シン・ギョクホ)氏、長男でロッテホールディングス(ロッテHD、本社・東京)元副重光会長の宏之(韓国名:辛東主=シン・ドンジュ)氏2人も在宅起訴され、総勢で18人が在宅起訴、逮捕起訴されたのが6人にも上った。これで4カ月にわたる捜査を事実上、終結するとみられているが、昭夫氏については引き続き、別件で起訴される可能性もあるという。

「昭夫氏は在宅起訴で出国禁止が解かれたことから、刑事裁判を受けながら、日韓の取締役をそのまま続ける可能性があるのではないでしょうか」(ロッテ関係者)という。

しかしロッテHDは「コンプライアンス」や「ガバナンス」の向上を繰り返しうたっており、「刑事・起訴された人物が代表取締役を続けることに対する世間の批判を耐えうるかは疑問だ」(前出・ロッテ関係者)という声もある。取締役を続けながらも代表権だけを返上するというシナリオもありうるのではないかという。

ロッテグループは日韓にまたがる財閥だが、ガバナンスの頂点は日本のロッテHD。かつてはロッテHDの経営の実権は長い間、長男の宏之氏が握っていた。

ところが2015年1月に宏之氏は解任され、代わって昭夫氏が実権を握った。今回起訴された昭夫氏は26日の午前、東京のロッテHD本社で開かれた取締役会の出席し、最近検察から在宅起訴された過程と容疑などについて詳しく説明。日韓ロッテグループ“ワントップ”の地位を再確認するとともに、ロッテHDの代表取締役やロッテ球団代表を続投することを宣言した。

しかし実刑を受けるようなことになれば、経営の第一線に立ち続けることは難しくなる。