もっとも、小松に寄せる高橋の信頼はこの上なく厚い。
「小松さんはいいところはいい、悪いところは悪いとはっきり言うし、弊社の状況を数値でしっかり把握されていて、それに基づいたいろんな提案を出してくださいます。作成する資料が実に理にかなっていて、私にもわが社の状態がよくわかる。それに、新店のオープンや改装のとき、商品を並べていると、棚の幅がほんの少し合わないとか、いろいろ不具合が起こるんですが、小松さんはそういう現場の不具合への対応がとても早く、答えを瞬時に出してくれるのです」
それだけではない。高橋の着任前に小松が仕込んだ“一番搾りプレミアムが当たるキャンペーン”では、通常のキャンペーンの応募数が300~400のところを、1200も集めて高橋を驚かせた。小松が照れながら言う。
「高橋さんとは、問題の共有、すり合わせがとても速くできる。キャッチボールをすごくスムーズにやらせていただいていると思っています」
さて、「キリン一番搾りアカデミー」は、開始時にチャイムを鳴らして授業を始める学校形式である。約50人の聴衆を前に、女性MCと醸造技術者が映像を交えつつ一番搾りの素材、製法、一番搾り麦汁と二番搾り麦汁の違い、おいしい注ぎ方まで、懇切丁寧に教えていく。
この30分の講義を、1日に4回開催する。小松ら営業マンも、休日返上でアカデミーを支えている。キリンが行った調査では、一番搾りの製法を知った人は知らない人に比べ、一番搾りに対する評価をぐっと引き上げるという結果がはっきり出ている。
バイヤーの高橋は、一番搾りをどう見ているのだろうか。
「一番搾りはお陰様で好調に推移しています。一番搾りプレミアムも定番にはない商品なので、絶対にレギュラーの一番搾りが売れるきっかけになっていると思いますよ」
キリンは今後も、この「キリン一番搾りアカデミー」を愚直に全国で展開していくという。(文中敬称略)