【田原】事務次官はだいたい2年だし、社長は短くて2年、長くて4年。6年は滅多にいない。
【御手洗】トップを上がりポジションにするのは島国に住む日本国民の知恵かもしれませんね。トップが数年で次々と代われば、みんな仲良くやっていけるという面もあるでしょう。ただ、世界的に見ると、日本のやり方はスタンダードとはいえません。外国では、最初から任期が決まっている企業はほとんどありません。政治の世界でも大臣クラスの人はかなり長く務めるので、電話一本で他の国の大臣と話ができる関係を持てるのではないでしょうか。
【田原】日本は中曽根さんが長くて、あとは小泉さんが少し長かった。
【御手洗】組織のトップというものはある一定期間は務めなければ人脈を築けません。政治でもビジネスでも人脈を築くには時間がかかるし、そういった関係を築いて即時のコミュニケーションが取れることが重要です。
【田原】よくわかりますが、役員には、御手洗さんがずっと社長をやっているから社長になれないという不満があるんじゃないですか。
【御手洗】それはないと思います。私はさまざまな局面で役員の成長を促す努力をしてきていますし、育つことを願っていますから。
【田原】どういうことですか。
【御手洗】社長になる前、私は人事を含む管理部門の担当でした。したがって社長就任後しばらくの間は人もよく知っていて、自分で次の役員を決めることができました。ところが会社の拡大とともに、すべてを自分ひとりで判断することが難しくなってきた。そこで考えた結果、アメリカ時代の知人であり、GEのCEOを長く務めたジャック・ウェルチ会長(当時)に手紙を書き、GEの有名な役員・幹部社員養成所の仕組みを勉強させてほしいとお願いしたのです。そうしたら、快く引き受けてくださったので、社員を派遣して、その仕組みを学ばせてきました。