手帳は「お荷物」か「頼れる秘書」か
「手書き」の手帳のメリットを知らなければ、手帳は文字通りただの「お荷物」になってしまう。年収200万円の人の中には「無駄な荷物」と断じる人もいる。
「持とうと思ったこともあったが、高いのでスマホで代用。荷物が増えるのも嫌だ」(ホテル勤務)
「予定以外に書くことがないので、手帳を持っている人が不思議でならない。今は便利な手帳アプリもたくさんあるのに」(テレビ制作会社)
「100円ショップの手帳で十分だと思っているが、人前に出すのは恥ずかしい。だからスマホになってしまう」(デパート販売)
それに対して「なぜ持たないのか」と首をかしげるのは年収2000万円の人たちだ。その責任の重さからか、パソコンやスマホの「データ消失」「データ漏えい」に対するリスクの低さをメリットとして挙げる人も多かった。
「書くことにより脳神経が活性化する」(きらめき不動産代表取締役・後藤聡志氏)など、デジタル入力と比べた場合の「記憶に残りやすさ」を実感している人も多い。
「16年間同じ手帳を使っているので、すでに秘書のような存在。革製のカバンやジーンズのように、手にも脳にも慣れ親しんでいる」(アイ・パッション代表取締役社長・浅井慎吾氏)というように、手帳が「なくてはならない存在」になっている人もいるほどだ。
[調査概要]年収200万円のビジネスマンと年収2000万円のビジネスマン(もしくは、役員級以上)1000人を対象に、アイランド・ブレイン、ベクトル、ベンチャー広報、リアライズ、リサーチプラスが調査。2015年10月22日~11月2日。
キヤノンマーケティングジャパン会長の村瀬治男氏は、スケジュールを定着させ、アイデアノートや「振り返り」としても使用するために「手書き」の手帳を選択する(2011年10月31日号)。
「パソコンのスケジュール表はどの予定も画一化してしまい、何の目的でそれを行うのか、どうもピンとこない。
そこで、自分で手帳に書き込む。個々の予定の意味合いが整理され、頭の中にしっかり残る。以前は予定を種類別に4色で書き分けるカラーコーディングも試したが、複雑になってわけがわからなくなり、結局、1色に戻った。シンプルな方法が一番長続きする。
アイデアを思いついたら、ICレコーダーに録音する方法も試したが、機械に依存するとどうもうまくいかない。メモ帳に書き残す方法も、あとで読むと何のことを書いたのか見事に忘れていて、これもやめた。
そのかわり、予定に対する結果を記録する習慣は30年間、続けている。記入は1日4行程度だが、出来事を書き残せば復習になる。後々、あのときはどうしていたか、記憶をたどるのに役立ち、今後はこうしようとアイデアにも結びつく。個人版の“温故知新”だ」
1971年からキヤノンU.S.Aに出向、93年キヤノンU.S.A社長など歴任。99年キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)社長。2009年より現職。