息子3人を東大理科III類(医学部)に入学させた佐藤亮子さん。塾の日程から受験当日の動きまで綿密にスケジュール管理を行い、勉強に集中できる環境を子どもたちに与えることに苦心してきた。
子どもたちを含めた家族のスケジュールは、手帳ではなくダイアリー式のノートを使って管理してきた。きっかけは次男の塾通いだ。長男が1歳のときに公文に通い始めた。1人なら、わざわざメモしなくても予定や学習の進捗状況を覚えていられた。しかし次男も通うようになり、管理すべき情報量が倍に。「頭は何かを記憶しておくより考えることに使いたい」と、ノートに書き留めるようになった。
当時、子どもたちは就学前。ノートに記録する内容も、勉強の情報より体調など健康面に関するものが多かった。そのおかげで学んだこともある。数字を具体的に書くことだ。
「インフルエンザでお医者さんに『熱が出たのはいつ?』と聞かれたときに、『昨日の夜に少し熱っぽくて』では情報として意味がありません。適切な診断をしてもらうには、何時に何度だったのかという正確な情報が必要です。子育て中に何度かこうした経験をしてから、数字を曖昧にせず具体的に書くことを心がけるようになりました」
手帳でなくノートを使っているのも数字へのこだわりからだ。小さなスペースにぎっしり書くと文字が小さくなり、数字の「8」と「6」などを混同するおそれがある。重要な数字ほど、大きく丁寧に書くのが基本だ。
数字を具体的に書く習慣は、用途が受験用にシフトしてからも続いている。たとえば受験当日の移動は「7時ごろ出発」ではなく「6時50分に家を出る」「7時10分の電車に乗る」と具体化する。家での学習スケジュールも、「6時~6時30分は国語、6時30分~7時は理科」と分単位だ。
「細かすぎると思われるかもしれませんが、分単位まできっちり決めておかないと、そのつど、次は何時から何をしようかと悩むことになります。悩んでいる間に、5分や10分はすぐ過ぎてしまう。子どもたちは塾で帰りが遅いですが、成長のために睡眠は十分に取らせたい。たとえ数分でもムダに使わせたくないのです」
佐藤さん自身も講演などで全国を飛び回る毎日だ。子どもたちを東大に送り込んだスケジュール管理のテクニックは、引き続き出番がありそうだ。