「財布をなくしたことはあっても、手帳はないんですよね」

そう語るのは、シリアル市場を牽引する第3の朝食フルーツグラノーラを手がけ、事業を急成長させたカルビーのフルグラ事業部長・藤原かおりさん。「手帳がないと落ち着かない」というだけあって、商談中は机の上に置き、長距離移動の際は必ずカバンから出して手元に添える。旅行中でさえ持ち歩く。まさに必需品だ。

カルビー フルグラ事業部事業部長 藤原かおり氏●4年で年商を5倍に伸ばしたグラノーラ「フルグラ」の躍進を支える。

「考えごとをするときは常に手帳を開いて、何か書きこみますね。頭に何も浮かばなくても、『なぜ○○だろうか?』のような独り言を書くだけでもいいんです。受験勉強も手を動かして覚えるタイプでした」

手帳と並行して使用するノートを見ると、読みやすい文字が整然と並んでいることに気づく。

「罫線は窮屈な感じがして、あんまり好きじゃないんです。何もないほうが自由度が高くて、アイデアが浮かびやすい気がします」

アイデアを練るのはオフィスとは別の場所に借りているオープンスペース。

「会社だとどうしても作業がルーティンになってしまい、新しい発想が湧きにくい」からだ。会社内で業務する日と会社外で考える日を分けるように意識し、発想を磨く日は他の予定を入れないように努める。手帳のマンスリーを見せてもらうと、まだ空白が目立つ翌月の予定に、いち早くオープンスペースに行く日が確保されていた。罫線のないページ。考えることに特化して他の予定を入れない日。“余白”を大事にすることが、藤原さんのアイデアの源といえそうだ。

手帳は長い時間軸で物事をとらえたいときにも役立つ。昨年どの仕事をどんなペースでこなしたか確認できるよう、藤原さんは前年3カ月分のマンスリーを保存。手帳の後部の青いページは特別なことだけを書くと決めており、自分が5年後に目指す姿など将来の抱負を記し、年をまたいで残している。

「キャリアを考える際に見返したり、『家族を大事にする』という抱負を見て実家に帰る予定を入れたり、時間管理にも反映してますね。放っておくと仕事ばかりしてしまうので、そこから引き戻してくれるページです」

カバーと本体の間には、プリントアウトした強みに関する自己分析結果も挟まっていた。キャリアデザインに必要な材料が詰まっているからこそ、藤原さんは手帳を携帯するのだろう。