高学歴な若手に1つだけ足りないもの
いまから振り返ると、自分は極めてチャンスに恵まれた会社員人生を送ったという気持ちがあります。国そのものが成長し、同時に会社も成長していくという中で、会社から次々にチャンスが降ってくる。まったく行ったことのない国に行き、製品をゼロから作って売る。仕事の内容も最初は生産技術部でしたが、海外の事業の立ち上げでは商品の開発から販売まで携わることができた。考えてみれば、それらは今のテラモーターズがやろうとしていることと同じなんですよね。
いま、テラモーターズはベトナムなどに自社工場を作り、OEMではなく自らの製品を開発し、製造しようとしていく段階にあります。ここでなら私の経験が間違いなく役に立つはずです。
徳重さんは著書の中で「四畳半からのスタート」と書いておられましたが、この渋谷のオフィスに来ると、確かにここから何かが始まっていきそうなワクワクする雰囲気を感じますね。
この会社は彼が40代で、後はほとんどが20代の会社です。みな優秀な大学を出ていて、英語も喋れる。海外に出ていくときも、私の時代とは比べ物にならない気軽さがあります。ただ、彼らのような優秀な人たちにも、一つだけないものがあるわけです。それが経験です。徳重さんが70代の私を採用した理由でしょう。
彼にはアントレプレナーを育てたい、いまの閉塞感を打破する起業家を育てたい、という夢があります。私はそのお手伝いをしたい。その結果を見届けることができれば、そのことがこの会社を人生最後の職場として選んだ私の喜びになるだろう、と感じるからです。