経常利益の20%以上を社員に還元
今や日本は65歳以上の高齢者が全人口の25.1%を占め、4人に1人となった。少子高齢化が進み、人口減による労働力不足が深刻化しつつあるなか、注目を集めている中小企業がある。その名もずばり高齢社だ。同社は高齢者専門の人材派遣会社で、登録社員の資格は60歳以上。現在、660人が登録しており、平均年齢が68.4歳で最高齢者は81歳だ。
「設立当初、社名がストレートすぎると反対の声が上がりました。しかし、高齢者に働く場と生き甲斐を提供することを目指すのだから、まさに“名は体を表す”でぴったりだし、そのうえ、広告費用をかけずに社名を覚えてもらえるということで、『高齢社』に決めました」と創業者である上田研二会長はユニークな社名にした理由を説明する。
その狙いの通り、顧客に対して大きなインパクトがあった。会社の資料などを持って新しい顧客のところへ営業に行き、名刺交換をすると、必ずといっていいほど「面白い社名ですね」と言われ、社名を覚えてくれたそうだ。
おかげで依頼される仕事も年々増加し、その種類もガスの開栓・閉栓、工事現場の監督、倉庫管理、家電修理、施工品質点検など100種類を超えるという。もちろん売り上げも順調に伸び、2011年度3億8000万円、12年度4億5000万円、13年度5億2000万円となっている。
「うちは社員第一主義ということで、働く社員が優先の会社です。例えば、本社には冷蔵庫が2つあり、缶ビールとつまみがぎっしりと詰まっています。これは登録社員に気兼ねなく訪れてもらうためで、午後4時以降をルールに彼らをもてなします。それ以前に来た人にはアイスキャンディを振る舞っています」と上田会長。そして、利益が上がると、経常利益の20%以上を就労状況に合わせて登録社員に還元しているのだ。今年は28%になるそうだ。
勤務体系も独特で週に2日でも3日でもよく、毎月本人が翌月の勤務スケジュールを申告し、それを基に勤務表を組んでいる。また、2人1組が基本で、1人分の仕事をワークシェアリングしている。これは、いくら元気といっても、高齢であるため、不測の事態が起こらないとも限らないからだ。2人で仕事を行っていれば、一人に何かあったときにもう1人が対応できるわけだ。