世界市場を志す2人の起業家が日々経験することを語った本対談。前2回(http://president.jp/articles/-/12937http://president.jp/articles/-/13030)では、起業のモチベーションやベンチャーのあり方、ブレイクスルーを目指すための人材をどう集めるかが語られた。
テラモーターズ・徳重徹社長とアキュセラ・窪田CEOの対談の第3回は、本連載のテーマである「朝令暮改」について語る。

変化に対応できる組織づくり、「朝令暮改」の別れ道

徳重 徹(とくしげ・とおる)●テラモーターズ社長。1970年、山口県生まれ。九州大学工学部卒業。住友海上火災(現三井住友海上火災)勤務を経て渡米。サンダーバード国際経営大学院にてMBA取得。シリコンバレーでベンチャー企業のハンズオン支援ビジネスを展開後、2010年、EVベンチャーのテラモーターズを設立。著書に『世界へ挑め!-いま、日本人が海外で戦うために必要な40の発想』などがある。 >>テラモーターズ http://www.terra-motors.com/jp/

【窪田】私の連載は「朝令暮改」をテーマにしているのですが、全く新しい分野に挑戦をしていると、時として軌道修正が求められることがありますよね。

【徳重】先日、日系企業の中堅クラスの方とお話する機会があったのですが、経営体制が柔軟に見える会社なのに、実のところ、いろんな意思決定のプロセスを踏んで何か物事を決めた後は、なかなか修正できないとおっしゃっていました。Aって決めた後に、実際に現場に足をつっこんでみたら、いやいや、BだよとかCだよとか、プランを変えたほうが明らかにいい結果を見込めることがあるわけですよね。ところが途中で修正するのはなかなか難しいと。僕が「それ、なんで変えないんですか」って言ったら、逆に「なんでそんなに簡単に変えられるんですか」って聞かれたんです。

答えは明確ですよ。決定したことを現場の判断をもとに速やかに軌道修正できるのは、我々がベンチャー企業であり、結果にこだわっているからだということ。仮に、僕の意思決定が間違えていて、AでなくてBを選択すべきでしたと。結果が大事であると考えれば、僕のメンツなんてどうでもいい話だから、Bでやれと軌道修正をするわけです。Aという判断に誤りがあることが分かった時点で、Bに切り替えるのは当たり前なんです。それぐらいズレ感がある。

【窪田】やはりいい意味での朝令暮改であっても、大企業は多くの場合、組織体制的に早い段階での軌道修正は難しいのかもしれません。新しい情報が入り、その情報に基づくと明らかに方向転換したほうがメリットも大きいことってあるんですけどね。場合によっては当初想定していなかったことや見落としていた新しい事実に気づくこともあります。

新たな意思決定をして、それをチームに伝えて軌道修正をして動けるかどうかは会社の規模感が影響します。組織が大きくなればなるほど、大型船舶じゃないですけど簡単に舵を切って変えるのは困難なわけですよ。末端の人まで意思決定の変更が行き届くまでに時間差が生じることは避けられない。巨大組織の悪い面なのでしょうけど、舵を切り替えるための時間がかかってしまうために、変化を許容しない組織運営になっている気はするんですね。組織が小さければ、身軽に方向転換しやすい。組織として変化に臨機応変に対応することが求められるイノベーティブな分野には、やはりベンチャー企業が向いていますよね。

極端な例でいうと、すでに商品が市場に流れていて大量生産を繰り返すだけの業態、かつ、規模も大きくて安定感があれば、簡単に変えてしまわないほうがメリットは大きいわけです。けれども、僕らみたいに誰も挑戦しなかった未開拓分野を切り開いていくときには、小型の組織で意思決定を迅速に、朝令暮改を許容できる組織が強い。原理原則さえ外さなければどんどん変えていくというスタンスですよね。

【徳重】今の日本で「朝令暮改」というと、恥ずかしいことだと解釈されているようにも感じるんですよ、特に大企業の経営者に。日本の産業界を背負ってきた経営者が書いた本を僕は勝手に古典と呼んで親しんで読むんです。「販売の神様」と呼ばれるトヨタの神谷正太郎さんとか、ソニーの盛田さんとか。盛田さんは、朝令暮改なんて遅すぎる、おかしいと思ったらその日中に変えろと言うんですよね。あの当時でもおそらく組織は結構な規模だったと思います。

だから、今の大企業になかなかダイナミズムがないのは、変化に積極的に適応しようという経営者がいないからじゃないかと思うんです。大組織、大企業だったら難しいというのは一般論として分かるんですけど、アジアの財閥を見る限り、必ずしも大企業だから意思決定が鈍いわけではないので。

財閥だからこそ、それこそ日本では考えられないほどのことができるわけですよ。彼らの意思決定は早いしダイナミズムもある。やはりリーダーの資質というか信念は、企業が大きくなった後でも生き続けるんじゃないかなと思いました。仮に危機に直面して失敗するリスクがあっても、それを受け止め、大きな変化と痛みを伴っても然るべき決定を下す、ということを大企業であろうと昔の経営者はやってきたんです。

【窪田】私も多くの起業家や会社を経営されている方を見てきましたが、うまくいっている方といってない方の違いって、リスクを取った時のダウンサイドをうまく乗り切れるか乗り切れないかなんですよ。リスクのダウンサイドが生じて失敗した時に、どうやって致命傷を負わない程度に生き残り続けるか。この戦略を持っている人が生き残っている気がするんですよ。そこにものすごく強さを感じますよね。