「JINS PC」など機能性メガネで知られるジェイアイエヌの田中仁社長。今年6月には目の動きや変化を読み取り、目や体の状態を分析するウェアラブルデバイス「JINS MEME」を発表した。失明を防ぐ新薬開発を手がけるアキュセラ窪田CEOとの共通点は、「目」の世界での挑戦だ。
 だれも思いつかなかったイノベーションを形にしようと奮闘する経営者たちが、日米のビジネスカルチャーの違いや挑戦について語る。

普通の人間だって「振り切る勇気」でチャレンジすればいい

田中 仁(たなか・ひとし)●ジェイアイエヌ社長。1963年、群馬県前橋市生まれ。高校卒業後の81年、前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)に入社。86年に同社を退社後、87年に独立、88年にジェイアイエヌを設立し雑貨の企画・卸売などを手がける。2001年アイウエア事業に進出し、福岡に「JINS」一号店を出店する。06年、大証ヘラクレス(現JASDAQ)に株式を上場。13年、東証一部にくら替えとなる。14年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。著書に『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』がある。 ジェイアイエヌ>> http://www.jin-co.com/

【窪田】田中さんの著書「振り切る勇気」、大変興味深く拝読しました。本をご執筆されたきっかけは何だったのですか? 事業の紆余曲折からプライベートなことも赤裸裸に書かれていらっしゃいますよね。

【田中】出版の元々のコンセプトでもあったのですが、ブランディングとしてJINSを知ってもらおうと考えたのがきっかけです。ところが、編集の方がうまいのです。どんどんエピソードを引き出されてしまって、最後は自分の半生の暴露本になってしまいました(笑)。こんなに書いてしまって大丈夫だろうかとも思う気持ちもありましたが、ここも「振り切る勇気」で出版に踏み切りました。

【窪田】すごく田中さんの人柄がわかりますし、やっぱりいろいろ苦労されていらっしゃる。メガネが最初だったわけではないというのはまったく知りませんでした。柔軟性というか、周りの環境の変化に合わせてビジネスをどんどん変えてきたことを証明しているという意味でも、十分ブランディングになっていると思います。

【田中】あとは、これから社会に出ようとする世代に読んでいただきたいと思っています。全般的に日本人は物事にチャレンジする精神が弱い傾向にある中で、今の日本は元気がありませんよね。自分は普通だから普通に生きようと縮こまっているように感じるのです。世の中で注目されている社長の方々も、特に最近は東大出身、マッキンゼー出身ですとか、あの人は最初から違うよな、という方が多いように思います。

その中で言うと、私などは高卒で地元の信用金庫に就職したのがキャリアのスタート。普通の中の普通の人間ですから(笑)。子どもの頃はさして努力をすることもなければ大きな失敗もなく、成績もトップクラスでなければビリでもなかった。そんな人間がキャリアの途中からチャレンジをしはじめたのです。チャレンジできたのです。何度どん詰まっても這い上がり、そこから学びを得て今がある。

普通の人間でも、清水の舞台から飛び降りるというわけではありませんが、思い切って飛び込んではじめてみればできるものなのですよ。それを、世の中の若い世代に知ってもらう必要があるのではないかと思いました。振り切る勇気はみんな持っているはずですから。

【窪田】そうですね。自分は普通の人間だからと決め込んでいる若い人たちには是非読んでいただきたいですね。勇気が得られると思います。人生は一度きりですけど、チャンスはいくらでもありますから。挑戦すべきチャンスを見極め、先の成功を見据えてどんどん失敗に立ち向かう勇気ですよね。

【田中】そういう思いがあって書いたものですから、社員に対する視点が少し欠けたかもしれません。次は社員向けに(笑)。

【窪田】JINSウェイの本が出てくると面白いかもしれないですね。今後は海外に展開されるなど、新しいことをどんどんやられるわけですから。