アメリカ展開の難しさ

【田中】そうですね。サンフランシスコに、来年の1月ぐらいに店舗をオープンする予定なのですが、それも大きなチャレンジです。すでに中国には30店舗出していますが、アメリカへの展開には思いのほかお金がかかります。何をするにもすべて弁護士事務所を通さなければいけませんし、その費用も高い。

アメリカという国は、自由の国で、いろんなものを受け入れてくれる土壌はありますけれども、保護主義で規制していく面もありますよね。

【窪田】それはありますね。だから、彼ら曰く、自由と平等というのはかなり厳しい。みんなが同意できるルールの上で享受されるものだという、法の下の平等みたいなものがあるので、ありとあらゆるものをアグリーメントとして明文化するんですよね。そうでないと、まったく価値観の違うバックグラウンドを持った人たちが合意できる土台がつくれない。

日本人同士であれば、なんだかんだ言ってもある一定の範囲内で収束するだろうという暗黙の了解がまかり通りやすいのか、こういう場合はこうで、あの場合はこうで、と問題が起こりうる可能性が低いことについては、明文化しないで契約書を交わすことがある。米国の場合はありとあらゆる、うまくいかなかったときにどうなのかなど、あらゆる可能性について事前につぶさに潰してからじゃないと始められないから、本当に大変ですよね。

【田中】そうですよね。おそらく経験を積んで契約していくうちに、いい契約が結べるようになっていくのでしょうから、とにかく始めるしかありません。

【窪田】周りの環境も絶えず進化しますから、それに対抗してと言ったらおかしいですけど、契約の相手方は自分たちにより有利な契約をなんとか作ろうとするし、こっちはこっちでそれをさせない。攻防を繰り返して何とか均衡する。弁護士費用はかさむばっかりなんですよね。