日本人こそ、グローバルで有利に戦える
【田中】そうですね。私が思うのは、日本にはいい会社も多いですし、優秀な人も多い。ですから、アメリカに出ればいろいろと世界の動きがわかって、グローバル企業になれる会社が多いのではないかなと思うのです。
でも、何故か出ていかないのですよね。そこがもったいない。
【窪田】そうですね。もちろんアメリカに進出しようとしてなかなかうまくいかないケースもありますけど、もっともっと出ていくべきだと思います。本来、日本人というのは比較的いろんな人種の方とも付き合えるし、わりとオープンですしね。まず相手を受け入れますから。
【田中】で、わりと受け入れられますよね。日本人は好かれやすいと思いますよ。
【窪田】実直だし、人を裏切らないし、人種としてのブランド力はありますから。そういう意味では本来はビジネスがやりやすいはずなんですけどね。
現地の責任者は日本人でいらっしゃるんですか?
【田中】現地のCOOは日本人です。そこに去年の秋から加わった西海岸のUCLAやUSCの新卒社員も入れて、現状では7、8人のメンバーで準備を進めています。
【窪田】中国事業のほうはどうですか。うまくいってらっしゃるそうですが、アメリカとはまた違ったご苦労があったのでしょうか。
【田中】そうですね。やはり中国も難しかったですね。今では好調ですが。何が大変だったかといいますと、たとえば、少しでも時給がいいところを見つけるとそちらへすぐ転職してしまうというようなことでしょうか。アメリカにもそのような面はありますよね。中国とアメリカの方って、実は似ているような気がします。
【窪田】自由ですからね。流動性が非常に高い。非常に資本主義的で、経済合理性ある判断をするというのは似ていると思いますね。人と人とのつながりよりは、ビジネスライクな感じはしますよね。支払う給料がその人に対する評価だという考えが会社と従業員の間で一致しているんですよね。特にアメリカの場合は、能力に値する報酬を払うということがその人の価値を認めることなので、遠慮して少なめにもらうということは、キャリア上のプラスにならないわけですね。
たとえばベンチャー企業では、水準レベルの給料を払えないかわりに株を渡しますと。将来その株の価値があがったらその分のリターンがある。何かの形で対価を払うことで、その人に対するリスペクトを表明するというのはありますよね。
【田中】日本では起こりえないだろうなぁと思う、いい意味での面白いことがありました。アメリカで採用した新卒のスタッフは、UCLAやUSCの大学、大学院を出ているのです。修士まで取った彼らが店舗オペレーションのマネージャー候補として入社してくるのです。いくら当社が日本では東証一部の上場企業とはいっても、アメリカはこれから。そんなわれわれのところにUCLAで勉強した人が店舗のオペレーションの仕事で来てくれたのは驚きでした。そこに何か可能性を感じるのです。
【窪田】アメリカでは、オペレーションを任せてもらえる責任というのは小さい会社だろうと、名のある会社だろうと、新しい会社だろうと、そんなに関係ないですね。むしろ、知られていない会社が自分のおかげで認知されたことのほうが、その人の勲章になって、次のキャリアにつながるんですよね。日本からアメリカに初めて進出した、それこそアメリカではまだ知られていない会社の認知度をここまで高めたという実績をその人がやれたとしたら、それはものすごく価値あるバリューとしてその人に残るんで。
【田中】日本人はそういう意識は薄いですよね。
【窪田】だから、必ずみんなアメリカで言うのは、“What is in it for me?”という、私にとって何の価値があるのかを必ず問うわけですよね。会社のために犠牲をはらうなんてあり得ないし、マネージメントがそういうことを期待してはいけないんです。社員が自主的に犠牲をはらうと言うならいいですけど、それを期待するのは最も嫌われるタイプの企業に成り下がってしまうわけです。
だから、彼らにとって何がプラスかというと、どうやって0から1の価値を生み出すか。何もないところからナンバーワンにさせるかとかいうのは一番腕が鳴るし、揺るぎない価値になるんです。若手はグロース・オポチュニティを求めていますから。
【田中】当社は国内でも外国籍のスタッフが増えてきたので、いわゆる日本的な意識はだいぶ変わりつつありますし、ダイバーシティ化を進めています。5月に発表した「JINS MEME」に関しては、日本発のイノベーションだと思うのです。これをどうやって世界で戦える武器にするかがこれからのわれわれの課題です。