世界市場を志す2人の起業家が日々経験することを語った本対談。第1回(http://president.jp/articles/-/12937)はテラモーターズ・徳重徹社長の起業のモチベーションと事業についてアキュセラ・窪田良CEOが質問し、リスクの捉え方とベンチャー本来のあるべき姿について話が展開した。
 第2回は、ブレイクスルーを目指す人材を集めるための鍵を紐解く。人材の流動性が組織を活性化する。結果的にダイバーシティある人材が集まっていたという徳重社長と、意図的に多様性を意識した組織づくりをした窪田CEOがその背景を語る。

日本はなぜ、理系経営者が少ないのか

徳重 徹(とくしげ・とおる)●テラモーターズ社長。1970年、山口県生まれ。九州大学工学部卒業。住友海上火災(現三井住友海上火災)勤務を経て渡米。サンダーバード国際経営大学院にてMBA取得。シリコンバレーでベンチャー企業のハンズオン支援ビジネスを展開後、2010年、EVベンチャーのテラモーターズを設立。著書に『世界へ挑め!-いま、日本人が海外で戦うために必要な40の発想』などがある。 >>テラモーターズ http://www.terra-motors.com/jp/

【徳重】日本で問題なのは、窪田さんのようにPh.D.の方、いわゆる理系の修士号とか博士号を取得した方が、まず会社を経営している率が少ない。やっていたとしても、ビジネスサイドのことがわからなくて、なかなかうまく行きにくいという問題がありますよね。その点、窪田さんが理系の仕事から経営者に変わられたのは興味があります。

【窪田】たしかに、技術者とか科学者がビジネスの仕組みを学ぶ機会は、日本では少ない気がします。アメリカでは理系の人でもダブルメジャーでMBAを持つケースは珍しくないんですよ。やはりビジネス的なセンスと科学的あるいはエンジニアリング的なものを経営に結び付けて活かせる、Multidisciplinary(多岐にわたる専門分野)に長けた人をある頻度で戦略的に輩出していますよね、アメリカは。

【徳重】それと、博士レベルの人は技術開発などを専門的に手掛けるから自分で指揮をとる必要はないにしても、ビジネスのフレームワークは分かっておいたほうがいいですよね。ある意味、共通言語ですから。以前、日本の技術ベンチャーの支援をやっていたことがあるのですが、技術力がある人ほどチームで交わすべきビジネス的なコミュニケーションができないケースをよく見ました。話がかみ合わないんです。

【窪田】ビジネスの専門家がビジネスをやればいいというのも一理ありますけど、技術者もビジネス的な背景を把握して、何を期待されるのかを理解できないといいチームとして効率よく動けないですよね。

欧米でも確かに技術が秀でているとその能力だけで通用するので、コミュニケーション能力が劣っていてもある程度の地位までは生き残る人はいます。一方で、経営戦略の指揮を取れる技術系エグゼクティブになる人は、当然のことながらコミュニケーションスキルが卓越しています。技術者の考え方に理解を示し、ビジネスサイドとの調整役となってチームを運営する能力も高い。

特にベンチャー企業の立ち上げのフェーズは、技術もビジネスも分かる人材が必要ですよね。ひとつの専門分野に秀でてはいるが尖った人を許容するだけの器がまだ出来ていない場合、その人のために組織全体が破壊されることもありえますから。徳重さんが起業した時はどのようなチームをつくったのですか?