ブレイクスルーのための明確なビジョンを経営者が示す
【徳重】最初の1年は求める人材が来ませんでした。僕には、「なんで日本の大企業はこんなに情けないのか」「なんで日本からブレイクスルーとかイノベーションを起こせるような会社が出ないのか」という葛藤があるんですよ。それを起業してから1年後ぐらいからメディアで発言できる機会が増えて、自分のビジョンを発信できるようになったんです。
そうすると、士気のある若いやつらとか、ビジネスの領域に長けた人材が集まってくるようになりました。技術系のシニアの方も増えました。経営者や創業者が真に思っていること、本気で考えていることを伝えることがどれほどインパクトのあることなのかを実感しました。「世の中をよりよくする」というありきたりのことではなく、この僕だから示せるビジョンを伝えていくこと。エッジが立ったビジョンでないと響かない。
【窪田】徳重さんがおっしゃっている通り、まずはトップがビジョンを発信し、それに共感した人が集まるというプロセスは、強いチームづくりには重要だと思います。 私の場合は、「世界から失明を撲滅する」というかなり大きなビジョンがあるのですが、ビジョンに加え、それがどれほど合理的に可能であるかということをしっかりと説明しています。ある程度納得してもらえれば、1度きりの人生だからどうせやるならそういうものにかけてみたいという人が集まってきます。
【徳重】結局、ソニーとかパナソニックがここまで苦しい状況に陥ったのは、リストラしたときに、経験ある技術者が韓国のサムスンとか中国メーカーに行っているわけですよね。経営者の能力とかスピード感とかコミットメントが負けていても、品質では勝てていたのに。その質の高い技術力をもった人材が日本の大企業から韓国とか中国企業に移っているわけですから負けますよ。日本では世界で通用するレベルの技術力をもった人材が溢れるほどいるのに、何故国内でベンチャーが生まれないんだって思うわけです。
つまり、おもしろいベンチャーが日本でどんどん生まれれば、日本の技術力に高い評価をもたらした技術者たちも挑戦しに集まってくるだろうし、あえて使い捨ての2年オンリーの会社を選ぶ必要もなくなるんじゃないかと。そういうメッセージを発信することが、テラモーターズのブレイクスルーを生んだし、気概ある人材が集まるようになった。