海外やベンチャーで「競争優位性」を磨け

【窪田】「ベンチャー企業は大企業に勝てるわけがない」そういう発想を生みだす既成概念や創り上げられた常識を疑うべきですね。だいたいマイクロソフトだって始めた時は「IBMにどうやって勝てるというのか」と言われていたけど、少なくとも基本OSの分野では勝ってしまうわけですよね。だから、本当に戦略次第でドミノのように市場をダイナミックに変えることができるというのが、ベンチャーの破壊力ですよね。

ベンチャーが生み出す新しいビジネスモデルと新しい知的財産、新しい技術。それが絶えず新陳代謝を促す。それがグローバル市場を狙い、世界で勝負する企業の競争を巻き起こす。こういう世界レベルでの市場の新陳代謝を実感してほしいですよね。

【徳重】日本の若手は尻すぼみになっていると感じます。ビジネスの新規参入は日々のオペレーションにしても悩みが多いわけです。戦後の安かろう悪かろうという時代から、世界に通用する日本というブランドを築き上げてきた、サムライ魂を持って頑張り抜いた先人がいるということを忘れてしまっているのではないか。勢いがない。

それが日本企業の海外での存在感の弱さにつながっている。海外に出て行くやつら自身に気骨がないと、ローカルの人だってすごいやつはチームに入ってこないですから。やっぱり海外でも人間を見ますからね、リーダーシップを含めて。

【窪田】ローカルの人材も自分の人生をかけるわけですから、成功する勝ち馬を見極めますよね。しかし、最近は世界で勝つために海外で挑戦しようという人が少ない。新たな再スタートを切ってゼロからはじめようとする人間がもっと出てきていいはずなのに。

状況によっては日本人であること自体に競争優位性が認められることがある。それを経験し次世代を導く。そういう人たちが増えると、そこに1つのクリティカル・マスができて、「海外で挑戦する日本人」としてのプレゼンスが高まってくる。そこにプラスのスパイラルが生まれるといいですよね。

あとはどうやって自分の専門性や競争力の引き出しを増やしていくかを考えるといいと思います。できるだけ自分の付加価値を高めるために。

グローバルな競争は行き着くところ、競争力のある人間が生き残るわけですよ。生命力があったり、根性があったり、やる気があったり、ある能力に突出していたり、それらに先んじた人が生存競争に勝つわけです。必ずしも力が強いものというわけではありませんが、その環境でもっとも生存が有利なように振る舞えるものが残り、そうでないものは淘汰される。洗練されていない野蛮な表現ですけど、適者生存は厳然たる事実です。その仕組みを変えることはできないから、そういう枠組みの中で絶えず変化する外部環境に適応して、どうやって生き抜いていくかを学ばせるのが大事だと思いますね。  

今の若い人たちは、日本は世界の中でも鳥かごの中にいるような特殊な環境であることに気がつかないといけない。環境に潔癖すぎたり、疑問を持たずに何でも言われた通りにしたり。日本の常識は世界の非常識である可能性があると考えたほうがいい。裏を返せば、それだけ日本が居心地のいい、すばらしい国であるということなのですが。

その中で如何にしてビジネスを創造して価値を生み出していくかが、グローバルでやっていくうえでは欠かせない能力というか、価値観ですよね。変化や多様性を許容してハンドリングできるって非常に重要ですからね。