専門家と議論できるのは上場企業の経営者だからで、個人の会社員には難しいと思われるかもしれない。そこにチャンスがある。深いところまで徹底的に学ぼうとする人は決して多くない。たとえ個人では難しくても、有志を集めれば、一流の専門家と議論する機会はつくれると思う。これほど効率的な学び方はほかにないだろう。
もちろん世の中はそう単純ではない。3人との議論だけで、わかったつもりになってはだめだ。重要なことは、ひとつの問題について、自分なりの答えを見つけられるまで延々と考え続けることだ。それが深い学びにつながる。
冒頭の設問の答えを記しておこう。おわかりの通り、MECEは「A. 男と女」である。「B. 日本人と中国人」は日中以外の国民が漏れてしまうからMECEではない。MECEとするには「日本人と中国人とその他の国民」とする必要がある。ただし昨今では、男女の中間に位置する人の存在が社会的に認知されるようになってきている。そうなると、A. はMECEだとは言い切れない。それが現実なのであり、現実はかくも複雑なのである。
1962年生まれ。津田塾大学卒業後、86年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。90年ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。99年DeNAを設立。2011年夫の看病のためDeNA社長兼CEOを退任、現職に。著書に『不格好経営』。