マッキンゼーは世界一のコンサルティングファームであるが、日本支社には数百人の社員しかいない。なのにどうして存在が際立つのか。出身者の方々に思考のトレーニング法を伺った。
「例え話」をされて本当に納得できるか
マッキンゼーの新人教育の内容は、きわめて常識的なものである。マッキンゼーといえばロジカルシンキングが売りだが、その最も初歩的な概念のひとつに「MECE」がある。
MECEとは「ある集合を重複がないよう、かつ抜け・漏れがないように分類する」というテクニックだ。たとえば、自然数を分類する場合、「奇数と偶数」という分け方はMECEである。奇数と偶数は重複がないし、自然数には奇数と偶数の2種類しかないから抜け・漏れもない。では、「偶数と3の倍数」という分け方はどうかといえば、これはMECEではない。10までの自然数を考えただけでも1、5、7が漏れるし、6は重複する。
「それはMECEになっていない」などと指摘されると、何やらありがたいお告げを授けられたように感じてしまうが、内容は単純である。試しにエクササイズをしてみよう。
Q. 人間の分け方として、以下のふたつはMECEかどうか答えよ。
A. 男と女
B. 日本人と中国人
答えは文末に記すが、MECEが象徴するように、私がマッキンゼーで学んだことにそれほどの深みはなかった。いや、正直に言ってしまえば、それは表層的なもので、学問と呼べるほど体系だったものではなかった。
にもかかわらず、マッキンゼーのコンサルタントが世間で重宝されているのはなぜか。それはひとえに、彼らの物言いが格好いいからである。
マッキンゼーのコンサルタントが、ある企業の会議に呼ばれて発言を求められたとしよう。彼は颯爽とホワイトボードの前に立つと、その企業の抱えている課題をすらすらと書き連ねていき、それに、間髪をいれず気の利いたネーミングを施すことだろう。