多くの人がその鮮やかな手並みに幻惑されてしまうわけだが、実態は「重なりと抜け・漏れのない分類法」を「MECE」と呼ぶことと大差ない。

ある企業の抱える課題について最もよく理解しているのは、その企業に20年、30年と勤め、四六時中自分の会社について考えている社員である。それでも多くの企業がコンサルタントを雇うのは、極言すれば、「自分たちがすでに気づいている課題を、気の利いたフレーズに言い換えてもらうため」だ。なかには「結論ありき」で依頼してくる企業もある。「マッキンゼーもこう言っている」と、自分たちの結論を追認させることで、組織の中に課題が浸透しやすくなるからだ。

要するに、コンサルタントの仕事とはフレージングなのだ。彼らは日夜猛烈に働きながら、格好よく説得するためのファクトとロジックを積み上げている。そうしたスキルや癖は、彼らの商売には役立つが、経営者としては役に立たないどころか邪魔になることが多い。今でも苦しみながら「unlearning(学習消去)」を続けている。

コンサルティングにはない「深い学び」の話をしよう。私は何ごとも根本から理解しなければ気が済まない性分だ。コンサルタントは短い時間で明快に説明することが本分だが、説明を受ける立場になると、それでは納得できない。たとえばITの世界には「パケット通信」という言葉がある。「情報を小包のように送ること」などと説明されるが、私はこうした説明を聞くと、すこぶる心地が悪くなる。「情報を小包にする」とはどういうことか。具体的な仕組みはまったくわからない。「そもそも電気信号とは」というところから知りたくなる。私は、幸か不幸か、例え話をされて、それでストンと腑に落ちることがまったくない。