外部のアイデアを導入するために自社データを公開する

このような革新的なソーシャルメディア戦略を大々的に実行しているローソンだが、驚くべきことに社内にソーシャルメディア専業者はいないという。白井氏の部下は4人で、それぞれローソンアプリ、メールマガジン、ホームページなどの業務を兼任しているというのだ。「あきこちゃん」からのメッセージも、「あきこちゃん」の専従者がいるのではなく、実はメールマガジンと内容が一貫しているので、それを手がける人が送信しているのだという。

また、重要なアニメ・コラボキャンペーンで使うアニメの選定に関しては、社内にアニメに詳しい人からなる「有識者会議」があり、また社外にも「ローソンHMVエンタテイメント」があって、それらのグループとLINEで密に情報交流することで決めている。社内外でのアウトソーシングとネットワークの体制が確立しているのである。

ローソンでは、提供する商品やサービスの改善のために、惜しげもなくオープンデータ化に取り組んでいる。13年8月に、「ハッカローソン2013」を開催し、自社のデータを公開してアイデアやアプリの創造を行った。このイベントの担当者である白井氏は、これまで幾度も外部の「ハッカソン」を見学に行き、短時間にアプリを作ることの凄さを目の当たりにしてきた。それを「ローソンでもできたら」と考え、COOの玉塚元一氏の了承を取りつけ、実現したのだ。

このイベントは、「アイデアソン」というアイデアを出し合うパートと、「ハッカソン」というアプリを作るパートの2部から構成される。ローソン・サイドが、店舗の位置情報、ソーシャルメディア・データ、「あきこちゃん」の3Dデータと音声データ、および購入履歴データ(架空)を提供し、これらを自由に使ってアイデアを出してくださいと一般に呼びかけたところ、エンジニアやデザイナー等が約60名参加したという。

「アイデアソン」では、3時間ほどかけてさまざまなアイデアを出し合い、後日「ハッカソン」でグループに分かれてアプリを開発してもらった。土日に行った「ハッカソン」では、徹夜組も出るほど熱のこもったイベントになったという。ここでの成果は、玉塚COOも参加する席で発表され、最優秀のローソン賞に「クックローソン」というアプリが選ばれた。これはローソン店舗で提供している食材をどのように調理したら美味しく食べられるのか、メニュー提案をしてくれるものである。白井氏は、この種のアイデアは「ローソン社内からは絶対に出てこないだろう」と指摘し、このイベントの意義を強調する。

「顧客と企業」「企業と企業」のホットな架け橋になる「あきこちゃん」の創造。ソーシャルメディアやアニメとの斬新なコラボ。そして外部の新鮮なアイデアを吸収するために自社データを公開していくオープンマインド等の革新的取り組みが、今日のローソンの高成果に結晶化したといえる。

関連記事
世界のユーザー2億人「LINE」の秘密
「アマゾン」の1人勝ちはなぜ起こるのか
「クチコミはコントロールできない」のウソ
グリー、DeNAがまだまだ沈まない3つの理由
なぜクックパッドの営業利益率は50%なのか