見栄は切ったが策はなかった。だが、胸はゴトゴト燃え始めた。米50俵を預かった高野さんの「ブランド米作戦」が始まった。まずは、神子原コシヒカリにブランド米の資格はあるのかだ。調べると経済誌の美味しいお米ランキングで全国第3位に選ばれていた。高野さんは狂喜した。
では、誰が食べればブランドになるのか。第一案の宮内庁は難しいとのことだった。国内が無理なら海外だ。神子原は、英訳すればサン・オブ・ゴッドではないか。ならば世界で11億人の信者を有するローマ法王だ。高野さんは切々と手紙を書いた。
東京のローマ法王庁大使館から連絡が入り、市長とともに50キロの新米を手に上京した。大使は「神子原は500人の小さな集落。バチカンは800人の世界一小さな国。架け橋にさせていただく」。
「献上米と銘打ってよろしいか」
「結構です」
カトリック新聞の報道で、2日後に在京の関係者から50俵の注文が入った。その後、「ローマ法王御用達米」との日本のマスコミ報道で700俵の米を瞬く間に売り切った。
高野さんの次の一手が注目だが「完全な自然栽培農法で作った食材で世界を制覇することです」。ニヤリと笑って言い切った。