起業家時代と大航海時代の共通点

リスクの高い冒険的事業の性質について少し考えてみると、この反乱の精神は今なお存在しているという結論に至るのではなかろうか。起業家コミュニティに詳しい人なら、悪いリーダーを退陣させなければ事業の存続にとって不利になることを知っているはずだ。新設企業の創業者やリーダーは、往々にして反乱によって追い出される。そして、それは通常、環境の不確実性がきわめて顕著なとき起こるのだ。

実際、20世紀半ばにシリコンバレーで始まった現在の起業家時代は、それ自体が反乱の産物だ。その歴史を簡単に記すと、ショックレー半導体研究所のチームが創立者のウィリアム・ショックレーに対して反乱を起こしたとき、すべてが始まった。ショックレーが以後「裏切りの8人」と呼ぶことになる反乱者たちは、その後、カリフォルニア州パロアルトを技術イノベーションの中心地にした企業群を創業したのである。この反乱は、シリコンバレーに今なお存在する考え方(訓練を受けた専門家、権限の委譲、自治、フラットで柔軟な組織構造、欠点のある権力者に対する異議申し立てといった価値を当然とみなす)を深く植え付けた出来事だった。

大航海時代のもう一つの特徴は、冒険的航海が社会文化レベルで崇敬されていたことであり、ベンチャー企業の偉業が今日、崇敬されているのと同じである。当時と同じく今日も、人々はそのような冒険的事業を指揮することを夢見、きわめてよく似たプロセスでそれを実現する。

ところが、現代の産業組織では反乱を支持する主張はきわめて打ち出しにくい。仕事の成功はなによりも効率によって定義される。反乱を起こしたら、必然的に掟に背き、業務を混乱させ、通常、お粗末なリーダーシップそのものよりさらに不快な状況を生み出すことになる。一般に、経営陣の力不足が広く認識されていて容易に証明できる場合でさえ、社員はたいしたことはできない。

起業家コミュニティとは異なり、大企業では、反乱という概念は組織の支配的論理にとって受け入れがたいものだ。悪いリーダーの下で働いている人々が反乱的行動をとることを夢想したり、より婉曲的な形の反乱的行動に走ったりしないと言っているのではない。だが、彼らが自分のキャリアを大航海時代の船乗りたちよりはるかにリスクにさらしており、別の生き方をすること、権威を打ち砕く起業家として生きることを考えるべきだということを意味しているのかもしれない。

(ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)
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