また、弊社にはユーザー目線で柔軟に物事を考えてくれる社員が多い。じつはカプコンではゲームの発売後もいろいろなイベントを行っています。先ほど説明したように、今でもゲームは売ったら終わりのビジネスモデルが中心ですが、その中でも私たちの開発プロデューサーたちは率先してイベントを開催して、ユーザーと接点を持ち続ける努力をしているのです。
20年ほど前に一世を風靡した「ストリートファイターII」という格闘ゲームをご存じでしょうか。じつは続編の前に「IIダッシュ」を出していますが、これは強すぎて不評だったキャラクターの能力を調整するなどユーザーの反応を見てマイナーチェンジしたタイトルでした。いまフリーミアムで求められている対応を、私たちは家庭用ゲームでもやってきたのです。そう考えるとフリーミアムのスピード感についていく素地はあると思っています。
ユーザー目線はプロジェクトの管理でも重要です。かつてゲーム業界では新作の発売延期がしばしば起きていました。開発者がクオリティを追求しすぎて納期に間に合わないのです。もちろんクオリティは大事ですが、それが開発者の自己満足では困ります。
ユーザーに喜んでもらうためには、いいものを作ると同時に、あらかじめ決まった時期に発売することも大切です。学生さんなら試験のあと、社会人であればボーナスが出たあとなど、新しいゲームを存分に楽しんでもらえるタイミングに発売日を設定してますから、それを裏切るわけにはいきません。
開発の過程で何か問題が起きることも当然あるでしょう。その場合はとにかく早めに情報を開示しなさいと言っています。早い段階で遅れがわかれば、いろいろと修正が可能です。そうした対応が徹底されているので、当社では近年、発売日を発表したあとの発売延期はほぼありません。ゲームビジネスは、開発者の自己満足よりユーザーの満足が大切。カプコンでは社員にそうした意識が自然に根付いています。