原則[7]みんなが賛成することはやらない
【鈴木】新しいことを始めるとき、多くの場合、まわりから反対にあいます。セブン-イレブンの創業も、「各地でスーパーが進出し、商店街が衰退しているのに小型店が成り立つわけがない」と反対されました。一方、私は小型店の凋落は生産性が低いからで、生産性を上げる仕組みをつくれば成り立つと考えました。セブン銀行の創業も「ATMの利用手数料を収益源にする銀行など成り立たない」と反対されましたが、私はコンビニにATMが設置されれば利便性が上昇し、金融サービスに対するニーズは高まると考えました。
新しいことに反対するのは、たいがい、既存の固定観念にとらわれているからです。人間は自分が思いつかないことには反対します。一方、私は人が思いつかないことには、それだけ価値があると考える。実行すれば、差別性が生まれ、結果として成功に至ります。反対に、みんなが賛成することにはたいてい価値がない。かつて、ボウリングが一大ブームになったとき、流通業からも次から次へと、みんな参入しましたが、私は社内で1人、反対しました。誰もがやりたいと思うのは参入しやすいからで、逆にいえば、差別化しにくい。いずれ飽和状態になり、単純競争に陥るのは目に見えています。実際、ボウリングは施設をつくって機械を入れ、あとはマニュアルどおりに運営できるからと、みんながやり始め、すぐに経営が成り立たなくなりました。
みんなが賛成することはたいてい失敗し、みんなから反対されることはなぜか成功する。反対されたことを説得し、実現するのは勇気のいることです。しかし、反対意見が過去の固定観念にとらわれたものであり、かつ、自分のやりたいと思うことが、客観的に見ても決して突飛でもなく、価値があると思えば、挑戦する。これが儲かるビジネスのための思考と行動の原則です。
1932年、長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設。2003年イトーヨーカ堂およびセブン-イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。05年より現職。