モノが売れない時代にもかかわらず売り上げを40年にわたって伸ばし続けるセブン-イレブン。創設者である鈴木敏文氏の黒字につながるアイデアはどこから生まれてくるのだろうか。その発想の原点に迫った。

※黒字ビジネスを発想するための7つの原則[1]~[3]はこちら(http://president.jp/articles/-/11312)

原則[4]顧客が変化に気がつかないように変化させる

【鈴木】セブン-イレブンではおにぎりが年間15億個も売れます。日本の全国民が1年に約12個買っている計算です。それだけ「おいしい」と認められている証しでしょう。

セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO 鈴木敏文氏

ただ、同じおにぎりでも味や品質は常に改良改善を重ね、変化させています。顧客はそれに気づかず、「おいしい」と感じているはずです。ある商品で利益を持続的に確保するには、顧客が商品の変化に気づかないのに同じ満足感を得られることが実は大切なのです。顧客は常に100点満点のレベルを求めます。売り手側がそれを上回る120点の商品を出せば、十分満足してもらえます。しかし、顧客の期待度は一定ではなく、常に増幅するため、顧客の求める100点満点のレベルはやがて無意識のうちに、売り手にとっての120点のレベルに上がります。

これに対し、売り手はとかく、これで顧客に満足してもらえたし、よく売れたからと、同じ120点の商品を出し続けようとします。しかし、買い手にとっては、それはただの合格点で、140点の商品が提供されて満足する。顧客は商品の質が上がっていることに気づかず、「おいしい」と感じるのです。

顧客は期待度以上の価値を感じて初めて満足する。その期待度は一定ではなくどんどん増幅し、以前は「おいしいもの」のレベルが次は「当たり前」になり、やがて、「飽きるもの」に変わる。

そのため、セブン-イレブンでは、弁当も、日本そばのつゆも、おでんのだしも、顧客が変化に気づかなくても、変化させています。もし、同じレベルの品質を提供しているのに売れないとすれば、原因は同じレベルを続けていることにあるのです。