原則[6]人の成功をマネしない

【鈴木】セブン-イレブンの1店舗あたりの平均日販は約67万円と他チェーンとは12万~13万円の開きがあります。その要因はいろいろ考えられますが、セブン-イレブンの経営の特徴の1つに、ものマネは絶対しないという鉄則があります。ものマネをする経営としない経営のどちらが楽か、するほうが楽なように思えますが、ものマネは相手が右に行けば右、左に行けば左に進むことになる。絶えず相手の動きが気になって、進む道が制約され、差別化できないまま、やがて単純な価格競争に巻き込まれます。自分で制約をつくって苦しむのです。

一方、ものマネをしない経営はいかに新しいものを生み出せるかが勝負で常に挑戦を求められ、大変そうに見えます。しかし、全方向に広角度で自由に考えられるので、むしろ楽であるという発想に切り替えるべきです。

小売業によるプライベートブランドも欧米で先行していました。ナショナルブランド(NB)の商品より価格が安いという手軽さを売りものにしており、日本でも同様の傾向がありました。これに対し、セブンプレミアムは価格面の手軽さだけでなく、品質面でもNBと同等以上の上質さを追求し、自己差別化しました。PB商品のパッケージには販売者名の表示しかないのが一般的な中で、チームを組んだ製造元のメーカー名も明記したのも、上質さをアピールするためでした。

われわれはたいてい、人の成功を見ると、そのよさをマネしたくなる心理が意図しなくても働いてしまいます。それでは、何の進歩もありません。競争とは自己差別化です。ものマネは絶対本物以上にはなれないし、トップをとることもできない。同じようなものならいらないという顧客に、いかに買ってもらうかを考えなければならない時代に、ものマネをしている限り、成功はありえません。