「雑談レベルで障害に?」と思われるかもしれない。しかし、たとえば容姿や恋愛に関する噂話、性的な冗談、酒席での性器の呼称の連発も環境型セクハラに当たる。

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下ネタOK/NGの境界線

「男性器、女性器を直接指し示す言葉は、たとえ酒席でもNG。逃げ切ることは難しい。ただ裏を返せば、直接でなければ逃げ切れるともいえます。行為を指し示す言葉は、セックスなどの横文字なら大丈夫。結婚についてあれこれ聞くのは、私は法的な問題になるケースはそれほど多いとは思っておらず、たとえば周囲に配慮しながら『バツが付いてる』とか、比ゆ的な言葉を使えばまず問題ないでしょう」

神経系パワハラでは、職場の人が私事に過度に立ち入ることが(うつ症の主因でなかったとしても)対象となる場合がある。つまり、雑談にも積もり積もればリスクがあるということだ。

セクハラ・パワハラが社会的に取り上げられるのは「今日の社会情勢も関係している」と野澤氏はいう。

「景気低迷、業績不振で、かつての高度成長期のように働けば給料が上がり、昇進するという期待感が今は薄い。そんな状況で、社員は過重な責務やノルマを課せられています。精神的に耐えられない人も出てくるでしょう」

そうした将来の不透明感が、特にパワハラ相談の増加や訴訟の形になって表れてきているのではないかと野澤氏は見る。

しかし、留意しなければならないことがある。「セクハラ、パワハラ訴訟は、訴える側、訴えられる側、その代理人たる弁護士も含め、そこに関わる誰にとっても益の少ない訴訟」であるという事実だ。パワハラ訴訟を例に取ろう。

「この手の賠償請求では、交通事故と同じ方法で損害額を算定するケースが多いのです」