ビジネスの場で、言葉に気を配れぬ者の居場所は少ないはず。が、“うっかり”“怒りにまかせて”のリスクは誰もが抱える。大禍を招いてしまう案件と、そうでない案件。その境界線が今、どうなっているのかを知っておくのは有益だ。

「暴力系」パワハラは減少。「精神系」が増えている

「てめぇ、死んでしまえ」「この給料ドロボウ」「だから結婚できないんじゃない?」――セクハラやパワハラという語が世間に定着した今、職場でうっかり、あるいは怒りにまかせて口にする言葉が抱えるリスクとは、いかほどのものだろうか。極端な話、雑談中のたった一言で法廷に立つことはありうるのだろうか。「ごく稀だが、ないことではない」というのは、弁護士の野澤隆氏だ。

「ただ、原因がその一言のみというのはまずありえません。訴訟に至るのは、職場環境や仕事の上下関係を背景に、日頃の不満・不快、鬱屈が積もり積もった結果です」

2012年度に都道府県の労働局雇用均等室に寄せられたセクハラの相談件数は約1万件。もっともその大半は法廷に持ち込まれるには至らず、調停で処理されているという。

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パワハラ・セクハラの類型と最近の傾向

「統計上の根拠はともかく、最近は、さすがに暴行など身体的な苦痛を与える暴力系のパワハラは減少。代わって隔離、仲間外し、無視するなど精神系のパワハラが増えているようです」

セクハラの場合も、立場を利用して性的関係を強要するような対価型は減り、職場での性的な会話などによる環境型セクハラが問題視されるケースが増加中という。

そんなセクハラ、パワハラで訴訟に発展するケースはというと、それは主に神経症やうつ症など、心身に障害が表れた場合だ。