図1はALH社の構想を示したものであるが、この構想で興味深いのは、天然ガスの供給者としてBG(イギリス)やGDFスエズ(フランス)、ガスプロム(ロシア)などを想定している点である。これらのヨーロッパ勢のガス会社は、手元に余剰の天然ガスを抱えており、北東アジア市場でそれを販売したがっている。一方、日本、韓国、台湾、中国では、今後もLNG輸入の拡大が続く。ALH社は、これらの需給のマッチングを図り、北東アジアでLNGを欧州並みの価格で取引することをめざしている。
良好な港湾や広大なタンクヤードを確保することの難しさ、地震・津波等の自然災害の確率の高さ、環境保全面や労働規制面での制約の大きさなどの点から見て、残念ながら日本でLNGハブターミナルを建設することは難しい。韓国での建設は日本から見れば「次善の策」ではあるが、それでも、北東アジアにLNGスポット市場が創設されるならば、わが国にも大きな経済的メリットをもたらすことだろう。スポット価格が低落すれば、長期契約分の購入価格にも引き下げ圧力が作用することになる。
ALH社は、まもなくLNGハブターミナル建設計画のフィージビリティ・スタディ(FS)に着手しようとしている。そのFSには、日本の石油元売り大手の東燃ゼネラル石油も参加を検討しており、成り行きが注目される。
見学時には写真1のような単なる広大な埋立地であったが、そこに図2のような巨大なLNGタンクが林立するようになるとき、エネルギー面での日韓協力の新時代が始まる。それがどのような成果をあげるか、大いに注目される。