「日米関税交渉の合意を着実に実行する」
日本政治が中長期にわたって不安定化する局面に入った。当面、衆参両院の過半数を1~2党で制することはないだろう。
酷暑の夏の決戦となった第27回参院選(7月20日投開票)は、自民、公明両党が大敗し、衆院に続いて少数与党に転落した。
石破茂首相(自民党総裁)は、自ら必達目標に掲げた「自公50議席を下回る47議席にとどまったが、開票速報中のNHKやTBSで「比較第1党の責任がある」「政治空白を作らない」として続投を表明した。限りなく「自分ファースト」である。
自民党内には、石破首相の退陣、それに伴う総裁選の実施を求める声は旧安倍派や麻生派などに強く、旧派閥単位の権力闘争の様相を呈している。党内の一部には下野論も出ているが、立憲民主党など野党に政権を形成する準備ができない現況では、「石破降ろし」の一環とみられている。
7月28日の自民党両院議員懇談会では、石破首相の責任を問う声が8割近くに上ったが、首相は続投の理由を「日米関税交渉の合意を着実に実行する」などと説明した。森山裕幹事長は党内に参院選総括委員会を設けて8月中に報告書をまとめ、その段階で「自らの責任については明らかにしていきたい」と辞任を示唆した。だが、「石破降ろし」の動きは収まらず、自民党は翌29日の役員会で、重要事項の議決権を有する両院議員総会を8月8日に開催することを決定した。
石破首相や森山氏は、政権の安定運営を目指し、自公連立に日本維新の会や国民民主党を参加させようとしているが、首相の進退と絡むだけに水面下の交渉の行方は見通せない。
国家戦略なきポピュリズムの時代に
今回の参院選は多党化が進み、既成(老舗)政党の自公、共産、社民各党が軒並み議席と票を減らし、立民党は現状維持、新興政党の国民民主党、参政党が議席を大きく伸ばした。2大政党制は一旦終焉を迎え、連立政権作りの政策合意に向け、各党が官僚批判や財源軽視の政策を前面に出してくる、国家戦略なきポピュリズムの時代に入ったと言えよう。
参院選の改選議席は、自民39議席(公示前から-13議席)、公明8(-6)、立民22(±0)、維新7(+2)、共産3(-4)、国民17(+13)、れいわ新選組3(+1)、参政14(+13)、社民1(±0)、保守2(+2)、無所属野党系7(+2)、その他2(-1)の計125議席となった。
自民、公明の与党は非改選と合わせて122議席で、過半数(125)を割り込んだ。「保守(右派)層、若年層、経済政策重視派が離れた」(自民党筋)のが直接の敗因だろう。

