高齢期における医療費に対し、どのような備えをすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの横田健一さんは「老後の医療費は高額になる傾向があるものの、公的医療保険制度のもとでは、実際の自己負担額はさほど大きいものではない」という――。
老後の医療費は実際どれくらいかかるのか
お金に関する不安の第1位は老後資金という調査結果があります。特に、医療費が高額になるのではと不安に感じ、民間の保険に入られている人も多いのではないでしょうか。
筆者は現在40代後半ですが、民間の医療保険には一切加入していません。一般的に「高齢期には医療費がかかる」と言われていますが、実際の自己負担額を知ると、わざわざ民間の保険などに加入して準備する必要がないと考えたからです。
では、高齢期における医療費は実際にはどのくらいかかるのでしょうか。本記事では、負担の実態と、民間医療保険の必要性について解説していきます。
次の図表1は、厚生労働省「2022年度 医療給付実態調査」をもとに、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度での疾病分類別の平均診療日数と診療費(10割相当)の平均を確認したものです。
入院した場合、入院しなかった場合(入院外)に分かれていますが、例えば、いわゆるがんを含む「II 新生物<腫瘍>」は1件あたりの平均入院日数が12.1日、診療費の平均が68万7408円と確認できます。
出所=厚生労働省「2022年度 医療給付実態調査」より、筆者作成
注)ここで1件とは同一月での診療を1件とカウントするため、2カ月、3カ月とわたる場合には同一の人の継続的な診療であっても2件、3件とカウントされることになります。
注)ここで1件とは同一月での診療を1件とカウントするため、2カ月、3カ月とわたる場合には同一の人の継続的な診療であっても2件、3件とカウントされることになります。
疾病分類ごとに日数や診療費は異なりますが、入院の場合、17日程度、診療費は高くても70万円程度です。この診療費はいわゆる10割相当です。後期高齢者の場合、多くの方は1割負担となります。さらに高額療養費制度の自己負担限度額(1カ月あたり)は、1割負担の方であれば1万5000~5万7600円ですから、自己負担額は限定的と言えます(詳細は後述します)。
一方、入院外の場合、日数は1カ月あたり1.5日程度で、診療費(10割相当)は数万円程度です。

