高市首相が掲げる「責任ある積極財政」と「バラマキ」は何が違うのか。経済財政諮問会議の民間議員を務める第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣さんの解説をお届けする――。
記者会見を前に、写真撮影に応じる高市早苗首相(自民党総裁)=2026年2月9日、東京・永田町の同党本部
写真=時事通信フォト
記者会見を前に、写真撮影に応じる高市早苗首相(自民党総裁)=2026年2月9日、東京・永田町の同党本部

高市政権継続で「トリプル安」は本当か

債券・為替市場を中心に、高市政権の進める「責任ある積極財政」を「野放図なバラマキ(放漫財政)」と警戒する向きがある。

「高市政権は無限に借金を増やそうとしている。ただでさえ巨額の債務を抱えている日本の財政は、野放図なバラマキによってそのうち危機に陥る。それを見越して、日本国債がたたき売られるはずだ」というわけだ。

一方、高市政権の積極財政によって、円売り圧力が高まり、さらに円安が進むという予想もある。

「野放図な財政拡大により日本のインフレ率が高まり、通貨価値が棄損し、円がたたき売られて暴落する」という見方だ。

ただこれらの批判は、いずれも高市政権の財政政策を誤解したものと言える。

「野放図なバラマキ」ではない

片山財務大臣は2026年1月のダボス会議で、高市政権の政策は「プロアクティブ(先見性のある)であってエクスパンショナリー(拡張的)ではない」「赤字国債に頼らずできることしかしない」という趣旨の発言をおこない、さまざまな批判に対して反論を試みている。

また、これからも市場安定への対応を行うことを約束し、信認を取り戻すためには様々な機関投資家や日銀とも話す、と述べている。

この発言は、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の定義を、国際社会やマーケットに向けて再発信し、信頼を繋ぎ止めるための極めて戦略的なものといえる。

「プロアクティブ」であり「エクスパンショナリー」ではないという表現は、海外投資家が最も警戒する「野放図なバラマキ(放漫財政)」という懸念を払拭するためのものである。

「プロアクティブ(Proactive)」とは、先見的・戦略的という意味であり、責任ある積極財政の中では、AI・半導体、造船、宇宙、海洋をはじめとした17の成長・危機管理分野への投資や、供給力の強化に「先手を打って」資金を投じることを指す。

これは「将来の税収増につながる投資」という意味を含んでいる。

一方、「エクスパンショナリー(Expansionary)」とは拡張的という意味であり、その否定は単に景気を下支えするために支出規模を膨らませるだけの政策ではないということ。つまり「野放図なバラマキ」を真っ向から否定した発言だ。