財政の持続可能性に問題はない
しかしながら、金融市場では、高市政権が成立した2025年末から2026年初頭にかけて長期金利の上昇(債券安)が起こってきた。また同時に1ドル=160円目前まで円安が進むなど、財政の健全性に対する危機感が示された(図表3)。
背景には、実際の予算案の中身とは裏腹に、「積極財政=国債増発」と連想され、超長期債を中心に利回りが上昇(債券価格の下落)してきたことがある。
こうしたことからすれば、高市政権には今後も丁寧な市場との対話が求められるだろう。
また、日銀の独立性を巡って政権との間で一時緊張感があったが、その日銀とも連携することで、政府と中央銀行がバラバラではなく、一体となって物価と市場の安定のために協調しているというメッセージを出すことができる。それによって投資家の安心感を誘うことも重要になろう。
以上より、「高市政権は規律を伴った積極財政を進めようとしており、市場を壊すような無謀なことはしない」とまとめることができるだろう。
「強い経済」を作るために一定の財政支出は必要だが、それはあくまで「名目成長率を下回る比率での債務残高の拡大」で、債務残高の対GDP比は引き下げていく。
この「成長と財政再建の二兎を追う」という姿勢が、高市政権の責任ある積極財政の核心と言える。
成長分野への投資がGDPを押し上げる
となると、片山大臣がダボスで強調した「プロアクティブ(先見的な)投資」が、実際にどのような分野に振り向けられているのか、またそれに対して日銀や市場がどう動いているのかが重要になってくる。
実際、2026年度予算案では、日本の「稼ぐ力」を強化するための分野に重点配分されている。
まず戦略投資(AI・半導体)分野があげられる。熊本のTSMC第3工場や、国産最先端半導体(ラピダス)への継続的支援に加え、AIインフラの整備に兆円規模の「経済安全保障枠」を確保している。
また、防衛・エネルギー分野では、防衛力の抜本的強化と、脱炭素(グリーントランスフォーメーション:GX)への投資がセットで進められており、エネルギー自給率向上による経常収支の改善を狙っている。
さらに、供給力強化の分野として、人手不足を解消するための省人化投資(ロボティクス)への補助金が拡充されている。

