話に引き込む2大要素「信頼性」と「専門性」

その稀有な体験と、よどみない言葉で映像を見ているかのように語られる専門家の話は、本物の脳を見せられる以上に人の興味を引きつけていく。ジル氏に限らず、実際の経験から生まれた話は、固い地盤の上に築かれた家のようにゆらぐことがなく、安定感がある。なぜなら、頭の中にある映像を再生するように話していくため、言葉に詰まることもなければ、話の流れを模索する必要もないからだ。話し手にもゆとりが生まれて緊張感も和らぎ、聞き手との間にも穏やかな関係が築けるようなる。

また、自らの専門知識がちりばめられた体験談なら、具体的な観察眼でいっそう映像をイキイキとさせられるし、熱意も伝えやすい。情報心理学では、話し手の「信頼性」と「専門性」が、話を受け入れてもらうときに作用する2大要素だとされている。信頼性についてはまた詳しくお伝えするが、つまりは話し手の専門性に近い話ほど、内容への信頼度も高まっていくというわけだ。

さらにはジル氏のようなインパクトが強い事例ならば、そのときの出来事や感覚をそのまま表現することで、より鮮明なイメージを与えられる。そのため、聞き手が実際に目撃していたかのような強い印象を残すことができるのである。