では、3つのポイントを満たしていないのにもかかわらず、Aさんが英語力不足を理由に役職を外され、給与が減額されたとしよう。英語力不足が降格の理由であることは事実として立証されている。はたして、元の役職に戻し、減額された給与の返還を求めて裁判に訴えたとき、勝てる見込みはあるのだろうか。その場合、役職が下がることで役職手当が削減されるケースと、等級が下がり、基本給が減給されるケースの2つが想定される。
下げられた等級を戻すことは可能
結論から先に言えば、たとえ、3つのポイントを満たしていなかったとしても失った役職手当について、裁判所が返還を命じる可能性は低いだろう。多くの学説や裁判所の判例では、従業員をどの役職に就けるかという裁量権は会社側にあることを認めているからだ。
一方、等級が1ランク下がり、仮に毎月の基本給が5万円減額された場合はどうなるのか。3つのポイントを満たしていないのであれば、裁判で勝てる可能性は高いだろう。
外された役職に戻ることは無理でも、下げられた等級を元に戻すことは可能である。
(構成=溝上憲文)