飲み会で異性の部下にボディタッチしたり、出張先のホテルで無理やり関係を迫るような行為は明らかなセクハラで、一発退場の「レッドカード」である。対して、1度だけではアウトにならないが、無神経に繰り返せばレッドカードになる「イエローカード」の“プチ・セクハラ”行為がある。
たとえば世間話の中で、未婚の同僚や部下に、1度だけ「結婚はまだ?」と質問した程度で慰謝料が発生するような事態になることはまずない。しかし、会うたびに同じ質問を投げかければ、重荷に感じて就業意欲をなくしたり、うつを発症する人すらいるかもしれない。そうなれば立派なセクハラであり、相手から訴えられて慰謝料が発生したり、会社から懲戒処分を受ける可能性がある。
同じく、数年前に流行した、30歳以上の未婚者を指す「負け犬」といった言葉なども安易に使うべきではないだろう。既婚者に対して「子供はまだか」などと尋ねる行為も極力控えるべきだ。出産や結婚は極めてプライベートな問題であり、職場であえて話題にする必要はない。
部下を「○○ちゃん」と呼ぶのも危ない。たとえばテレビ業界のように男女関係なく“ちゃん付け”で呼ぶことが1種の文化と化しているような職場ならともかく、“さん付け”が定着している職場で、特定の異性だけを「○○ちゃん」と呼べば、何か特別な意味合いがあると判断されても仕方がない。
露出度の高い服装で出勤した女性社員に、「男を誘うような服装をするな」と注意するのはプチ・セクハラである。かといって、自尊心を傷つけないように「セクシーでいいけど」「僕は好みだが」と余計な前置きをすると、性的なニュアンスを含んでしまう。「業務に相応しくないので気をつけて」と淡々と指導すれば事足りる。
飲み会の後、女性社員をタクシーで自宅の前まで送るような行為も気をつけたほうがいいだろう。特に1人暮らしの女性の中には、男性に自宅を知られることを脅威に感じる人もいる。実際、「送ってくれた上司が無理やり部屋に上がり込もうとした」「踊り場でキスされそうになった」といった被害が後を絶たない。特に相手が嫌がっているように見えるときは、タクシー乗り場や自宅の手前まで送り届ける、もしくはタクシー代だけを渡して1人で帰ってもらい、後日領収書を受け取って精算するというやり方が賢明だろう。
恋愛は個人の自由であるとはいえ、上司が部下に恋愛感情を抱き、相手が断りにくい力関係の中で交際を迫ったと取られたらレッドカードに発展しかねない。本人は公私混同していないつもりでも、異性の部下を執拗に食事に誘っただけでも立派なセクハラになる。