大企業依存が現実逃避を加速させる
しかし、そういう事実を学校で教えず「ホンダやソニーが日本の経済成長を牽引した」という神話を刷り込んだ。だから、われわれは心のどこかで「大企業が元気になれば高度経済成長期のように日本全体も元気になる」と期待してしまっているのだ。
この悲劇的な勘違いこそが、日本経済低迷の原因のひとつだと思っている。自分たちで身を切るような努力をせず、わずか0.3%の企業に助けてもらおうなんてあまりにムシが良すぎる。日本経済を本当に支えている「中小企業」からも目を背けさせる。つまり、日本人の「現実逃避」を加速させてしまっている。
日本経済の7割は「内需」でしかもサービス業だ。経済や雇用を牽引していると錯覚されている大企業の多くは、自動車、アパレル、食品、そして外食まで海外進出に踏み出し、そちらを稼ぎ頭にしようとしている。つまり、多くの日本人が信じている「トリクルダウン」はさらに期待できない。
ちょうどこれからまたマスコミが「春闘で賃上げムード」「過去最大のベア」とか大騒ぎをする季節がやってくる。いい加減そろそろ意味のない「大企業神話」を捨てて、他国のように「賃金のボトムアップ」に手をつける時ではないのか。
(初公開日:2025年2月6日)