海外ではぐんぐん最低賃金が上がっている
こういう国は珍しい。世界では「企業経営者よりも労働者の生活を守ったほうが消費を活性化させる」「最低賃金を引き上げることは中小企業の競争を活性化させる」という考えに基づいて、物価上昇に伴った形で最低賃金を引き上げていくことの方が多い。
例えば、マレーシアでは最低賃金が月1500リンギ(約5万2500円、1リンギ=約35円で換算)だが、今年2月に1700リンギ(約5万9500円)と約13%引き上げる。また、トルコ労働社会保障省によれば今年1月に1日当たり最低賃金は866.85リラ(約3901円)とした。これは昨年の最低賃金から30%増となる。
しかし、日本の最低賃金はなかなかそういう話にならない。その代わりに大騒ぎになっているのが、「ユニクロが初任給30万円突破!」みたいな「大企業の賃上げ」だ。
「大企業のおかげで成長できた」神話
では、なぜ日本人は自分たちの生活や賃金にほとんど影響のない「大企業」が、日本経済復活のカギだと思い込んでいるのか。いろいろなご意見があるだろうが、「神話」のせいだと個人的には思っている。
学校の教科書などでも掲載されているが、戦後日本が奇跡の復興を果たしたのは、ソニーやホンダというものづくり企業が世界で支持されたことなど、大企業が牽引したと言われている。しかし、これは「デマ」だ。
学校ではあまり教えないが、日本は戦前から欧米社会に警戒されるほどの「世界有数の経済大国」だった。それがあの無謀な戦争のせいで「貧しい国」へと転落しただけだ。
もともと先進国なので国民の教育レベルは高いし、基本的な社会インフラは整備されているところに、戦後のベビーブームで一気に人口が急増した。そこに復興特需や朝鮮・ベトナム戦争特需も追い風となって、再び戦前のような経済大国に戻った。
つまり、衰退した先進国が「人口増」を武器に復活をしただけで、「奇跡」でもなんでもない。事実、日本が世界第2位のGDPになったのは、世界第3位のイギリスの人口を追い抜いたタイミングだ。