成功者はみな数字で経験を語る

外資系IT企業を経て国内の中堅アウトソーシング会社に転職した高柳明氏(仮名、45歳)は、勤務先が別会社に買収されたのが転職のきっかけになった。

「体制が大幅に変わり、自分がやりたい仕事ではなくなったので、ならば自分が外に出ようと思いました」(高柳氏)

これまで高柳氏はSE、プロジェクトマネジャーとして主に顧客システムの運用サービスを手がけてきた。たとえばある顧客の大規模プロジェクトで当初、毎日2~3件発生していたシステムトラブルを4年後には3カ月に1回に激減させるなど多くの実績を持ち、新規プロジェクトの立ち上げ経験も豊富である。

「顧客ありきの仕事をしたい」という思いが強い高柳氏が転職活動を開始したのは、M&A後にセールス優先の体制が取られるようになったからだった。

高柳氏が転職エージェントに出した条件は、風通しのよい、上にモノが言える会社。職位にこだわりはなく、収入は下がっても将来上がる可能性があればいい。

そして高柳氏が転職先に選んだアウトソーシングサービス会社での仕事は情報システム部門の副本部長で、本部長は社長が兼務のため実質的に社長の直属となる。年収は以前より8%アップした。

「決めた理由は社長のカリスマ性です。会食したときに社員を思いやる言葉が端々に出てきて『この人と仕事するなら一緒に会社が潰れても構わない』と思いました。自分でシステムを組みたいという気持ちがあり起業も考えていたのですが、この会社なら自分のやりたいことが全部できます」(高柳氏)

前出の松井氏は専門性、高柳氏は専門性とマネジメント力を持った人材であるが、大手メーカーの部長職から中堅メーカーの執行役員に転職した秦和男氏(仮名、52歳)はそれらにグローバル対応力まで併せ持つ、転職市場の“モテ要素”すべてを兼ね備えた人物である。なお、年収はこの転職で30%増加したという。