不確実性に満ちたビジネスの中で意思決定に不可欠な「確率」の考え方とは。大人の数学塾の塾長永野裕之さんは「確率は、未来の可能性を数値化し、客観的に評価することを可能にする。確率を使いこなせるようになれば、リスクを最小限に抑え、チャンスを最大限に活かすための意思決定を、自信をもって行うことができる」という――。

※本稿は、永野裕之『【数学的】意思決定トレーニング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

成功確率が高いのはどちらか

【問題】
大手テクノロジー企業が新しい人工知能(AI)システムを開発しています。このシステムは3つの主要モジュールで構成されており、各モジュールの開発の成功確率は以下の通りです。
・モジュールA:成功確率80%
・モジュールB:成功確率70%
・モジュールC:成功確率60%

システム全体が成功するためには、少なくとも2つのモジュールが成功する必要があります。また、各モジュールの開発は独立して行われ、1つのモジュールが失敗しても他のモジュールの開発は継続されます。

企業は以下の2つの戦略を検討しています。
戦略①:すべてのモジュールを同時に開発する
戦略②:モジュールを1つずつ順番に開発し、2つのモジュールが成功した時点で開発を終了する(A→B→Cの順)

システム全体が成功する確率が高いのは、どちらの戦略でしょうか?

分かれた矢印に足を乗せる人
写真=iStock.com/Dontstop
※写真はイメージです

確率の誤解されやすい定義

ビジネスの世界は常に変化し、不確実性に満ちています。明日何が起こるのか、どんなチャンスやリスクが待ち受けているのか、完全に予測することは不可能です。

しかし、私たちは常に意思決定を迫られ、その結果が成功に繋がるかどうかを判断しなければなりません。このような状況下で、頼りになるのが「確率」です。

確率は、未来の可能性を数値化し、客観的に評価することを可能にします。過去のデータや経験に基づき、将来起こり得る事象の確からしさを予測し、それに基づいて戦略を立てることもできます。

確率を使いこなせるようになれば、リスクを最小限に抑え、チャンスを最大限に活かすための意思決定を、自信をもって行うことができるようになるでしょう。

「確率」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、確率は誤解されやすい概念でもあります。

最初に確率の定義をはっきりさせておきましょう。

確率とは、「ある事柄の起こりやすさの程度を表す数値」です。確率はふつう0以上1以下の数値で表します。絶対に起こることの確率は1(100%)であり、絶対に起こらないことの確率は0(0%)です。