シャワーを浴びれば「感覚遮断」の状態になる

マインドフルネスの文化にも流行り廃りがあって、人によって合う合わないがある。これがよいという風にお勧めするのは難しいが、とにかく日常を忙しくして、ムダに歩いたりする暇もない人、なおかつストレスアウトしているエグゼクティブに向いているのはシャワー。超多忙な人がいいと言っているのも最近よく耳にする。

シャワーを浴びているときは、いわゆる「感覚遮断」の状態に置かれるからだ。シャワーを浴びている数分間が、事実上、メディテーションタイムになるというわけだ。お風呂にゆっくり浸かる時間的余裕がない人でも、シャワーを浴びるぐらいはできるだろう。シャワーを浴びているときにはSNSもやれないから、仕事の情報から遮断される。完全にリラックスできる時間だろう。

シャワーヘッド
写真=iStock.com/ben-bryant
※写真はイメージです

羽生善治氏は「休みの日」に何をしているのか

僕が今まで会った人の中でもっとも「マインドフルネスな人だ」と思ったのは、前記した棋士の羽生善治さんだ。ある番組で対談したときに、僕は興味があって聞いたことがある。

「羽生さんは、休みの日は何をされているんですか?」

すると羽生さんはこう答えた。

「ソファに座ってのんびりしています」

“のんびり”って何をしているのだろうと、さらに尋ねた。

「本を読んだり音楽を聴いたりしているんですか?」
「いや、ただソファに座って何時間もボーッとしているだけです」

茂木健一郎『意志の取扱説明書』(実業之日本社)
茂木健一郎『意志の取扱説明書』(実業之日本社)

羽生さんは将棋を指すとき、千手先まで読んでいるという。一つの手を考えるのに約1秒かかるというから、次の一手を指すのに一時間かかることもある。名人戦ともなると、朝の9時から夜9時まで将棋を指すという対局が丸2日間続く。常人には到底不可能なほどの、すさまじい集中力と情報処理能力が求められることは、想像に難くない。

羽生さんがオフの日に何時間もボーッとしていたい気持ちも少しわかる気がした。

そうしたマインドフルネスの時間には、先ほど触れた「デフォルト・モード・ネットワーク」を活性化させることができる。これはランニングをしているときにも機能が活発になる。僕はランニングを続けているが、確かに、その効果を実感できることがある。

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