筆者が座禅をあえて推奨しないワケ
マインドフルネスの状態になるにはどうしたらいいのか。
座禅もその一つだ。瞑想状態に入るには、自分の呼吸や心臓の動きに注意を向けることだと言われている。
ただ、僕は座禅に代表される伝統的なマインドフルネスの手法をあえて推奨しない。というのは、僕自身も何回も座禅などをしたことがあるし、マインドフルネスの一派のような方ともよく会ったりした。しかし、そういう方に共通しているのは、意外と遠くの世界が見えていなかったりすることだ。マインドフルネスという、ある種理想化された「繭」のような世界に閉じこもっているとうまくいかないことが多い。
もちろんマインドフルネスができていない人が、いわば“クリニック”に行くような目的で座禅をやるのは一つの選択肢だと思う。その体験から、自分にその方法が合っていれば、続けたらいいだろう。
僕は恐山で、禅僧の南直哉さんのもとで座禅をやったことがある。そのときは「茂木さん、何かできてますね」と褒められた。僕はそれ以前からマインドフルネスになる自分なりの方法を体得できていたので、あえて座禅を続けようとは思わなかったのだ。
ジョブズ氏とマスク氏の決定的な違い
その体験から言えるのは、マインドフルネス状態になれないと困っていない人が、お寺で座禅をして呼吸を整えても、なかなか瞑想状態に入れないかもしれない。無理はしなくていいと思う。
多くの人に聞き取り調査した結果からも、マインドフルネスと座禅の習慣はあんまり関係ないのではないかと考えている。もしかしたら、座禅をやる人たちがマインドフルネスの概念を間違って捉えているのかもしれない。
僕の評価では、スティーブ・ジョブズなどは、比較的座禅と親和性の高い人だったと思う。Googleも心を整えるマインドフルネスのために瞑想を採り入れた。しかしイーロン・マスクはそういうことはしない。ただ、マスク自身は、彼のXへの投稿など公開情報を読む限りでは、座禅をしていなくても、マインドフルネスが高い人だと見ている。しっかりと世の中の動きを視界に捉えているからだ。
マスクの場合は、柔術のようなアクティブなマインドフルネスが合っているのかもしれない。