効果的な目標設定とはどのようなものか。脳科学者の茂木健一郎さんは「脳の回路の視点で見ると、キリンが高いところにある葉っぱを食べたい欲望があるから、『首』が伸びるということが実際に起こる。有名になりたいと願う若者がいるとしたら、その欲望は大事にしたほうがいい」という――。
※本稿は、茂木健一郎『意志の取扱説明書』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
2018年11月13日、日本陸連の新プロジェクト「JAAF RunLink(ランリンク)」発表会見に出席した、アドバイザーに就任した理学博士の茂木健一郎氏(左)と実業家の堀江貴文氏(東京都)
日本人同士なら「どうもどうも」と言い合うが…
大学、企業の研究所、メディア……と、いろいろな組織、さまざまな職業の人と、日本だけでなく海外でも関わってきた。
移動するたびに、メタ認知をしないと、コミュニケーションをとるのが難しい。たとえば日本人同士が会うと、頭を下げながら「どうもどうも」と言い合う。
しかしそういう態度は、海外にいくと通じない。“How are you doing ?”と言い合って握手する。もしアメリカに行って、「どうもどうも」とやってしまったら、相手は怪訝に思うだろう。
それがメタ認知の第一段階。
でも、外国の人が日本に来ると、僕はつい「どうもどうも」とやっているような気がする。どっちが上・下ではなくて、その場の雰囲気で、自由自在にどちらの態度で対応するか、切り替えられるようになる。これが第二段階だ。
メタ認知が高くなると、どんな場所でも生きていける
アメリカでクルマを運転するとき、左ハンドルで右側通行になるのはあらためて言うまでもない。その方式に慣れてから日本に戻って運転すると、しばらく戸惑ったりすることもある。なかにはそれを自慢げに言う人がいるが、そういう馬鹿にならないようにしたい。規則の違いをことさら言い立てずに、自由に切り替えられるようになるのがカッコいいことだと思うし、メタ認知が高いということだ。
それはさておき、こういうことを繰り返しやってきたので、メタ認知が強くなったのかもしれない。足を踏み入れた場所に合わせて、自分がどうするかをコントロールできる。
「Be water」(水になれ)
俳優・武道家のブルース・リーの言葉である。
「どんな容れ物にも対応できるように、水のようになれ」
メタ認知は水になるように状況を把握することである。