宇宙で起きる出来事は、私たちの生活にどんな影響を与えるのか。宇宙物理学者の佐藤勝彦東大名誉教授は「太陽で“スーパーフレア”が発生すると、地球に甚大な被害がもたらされる。数千年に一度とされるこの災厄は、全世界規模の停電を引き起こす可能性が高い」という――。
※本稿は、佐藤勝彦『眠れなくなる未来の宇宙のはなし』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。
太陽表面での爆発が地球に磁気嵐をもたらす
太陽の表面では、「フレア」(太陽フレア、太陽面爆発)という激しい爆発が毎日のように発生しています。爆発にともなって、強力な紫外線やX線、ガンマ線などの電磁波や、陽子など電気を帯びた高エネルギー粒子(プラズマ粒子)が太陽の周囲に放出されます。
またフレアにともなって、太陽を取り巻く超高温の希薄なガス(コロナ)の物質がプラズマの塊として爆発的に放出される「コロナ質量放出」も発生します。
フレアやコロナ質量放出が地球に向いた太陽面で発生すると、電磁波やプラズマの塊が地球に襲来します。紫外線やX線は光速(秒速約30万キロメートル)でやって来るので、フレアの発生からわずか8分で地球に飛来します。
一方、コロナ質量放出によるプラズマの塊は秒速1000キロメートル程度で飛来し、1日から3日かけて地球に届きます。すると、人工衛星や飛行機の無線が使えなくなったり、地上の送電線に過電流が流れて、電力会社の機器が壊れて停電が発生したりします。これが「磁気嵐」(または太陽嵐)です。
極地方で見事なオーロラが見られるのも磁気嵐の時です。オーロラは、磁気嵐などによって運ばれてきたプラズマ粒子が地球の大気とぶつかって光を放つ現象です。

