磁気嵐による停電は9時間続いた
磁気嵐による被害で有名なのは、1989年3月にカナダ・ケベック州で起きた大停電です。夜中に起きた停電は9時間続き、600万人が影響を受け、被害総額は数百億円に上ったそうです。
ほかにも、通信障害によってリレハンメル五輪の中継放送が中断したり(1994年)、日本のX線天文衛星「あすか」が磁気嵐による大気の膨張を受けて回転して観測不能になり(2000年)、半年後に大気圏に落下したという事例があります。
フレアの強さは、X線の強度によって、小規模のCクラス、中規模のMクラス(Cクラスの10倍)、大規模のXクラス(Mクラスの10倍)などと分類されます。Xクラスよりさらに上は、X10クラス、X100クラス、……と呼ばれます。
カナダの大停電を引き起こした1989年3月のフレアは、Xクラス(X4.6)でした。Xクラスの大規模フレアが発生すると、地球に大きな被害が及ぶ可能性があります。
1859年のフレアは鉄塔から火災を発生させた
では、フレアの強さと発生頻度の関係はどうなっているのでしょうか。Cクラスのフレアは1年間に1000回ほど、1日平均で約3回発生しています。これがMクラスになると年に100回ほど、Xクラスは年に10回ほど発生します。フレアの強さが10倍のものは発生頻度が10分の1になるという、きれいな関係性が見られるのです。
人類が経験したもっとも強いフレアは、1859年9月1日に起きた「キャリントン・フレア」といわれています。じつはこれが、人類が観測した初めてのフレアでした。イギリスの天文学者キャリントンが黒点をスケッチしている最中に、太陽面でフレアが発生したことに気づいたのです。
この時は、低緯度のハワイやキューバでもオーロラが見えたほどの、史上最大の磁気嵐(1989年3月の磁気嵐の3倍程度の強さと推定されます)が地球を襲いました。ヨーロッパや北アメリカ全土の電報システムが停止して、電信用の鉄塔は火花を発し、火花放電による火災も発生したそうです。

