巨大な天体が地球に衝突し、甚大な被害をもたらす……そんなSF映画のような出来事は本当に起きるのだろうか。宇宙物理学者の佐藤勝彦東大名誉教授は「2013年にロシアで直径17メートルの隕石が落下し、1200人以上が負傷した。120年ほど前には直径50メートル級の小惑星が落下してきたこともある。天体衝突の可能性は決して杞憂ではない」という――。
※本稿は、佐藤勝彦『眠れなくなる未来の宇宙のはなし』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。
2013年にロシアを襲った巨大隕石落下事件
近未来の地球を襲うかもしれない、いくつかの災厄が存在します。なかでも多くの生物種を存亡のふちに追い込む最大級の自然災害があります。小惑星や彗星の衝突です。
巨大な天体が地球に衝突するといえば、SF映画『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』(ともに1998年公開)で描かれたパニックを思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。あるいは、6500万年前に恐竜を滅ぼす原因となったとされる、直径10キロメートルもの「巨大隕石(小惑星)の衝突」を連想する方も多いでしょう。
しかし、「それは所詮、SFの世界の話でしょう?」とか「何千万年前という大昔の出来事で、現代の私たちには関係ないでしょう?」というのが、一般の皆さんの偽らざる思いだったはずです。
「宇宙から隕石が降ってくるのは知っているよ。でもそれが私たちに危険をもたらすだなんて、普段考えたこともない。考えたところで、その危険度なんて限りなくゼロに近いんじゃないの?」と、そうお考えだったのではないでしょうか。
ですが、天体衝突の心配をすることが必ずしも杞憂とはいえないことを教えてくれたのが、ロシアの「チェリャビンスク隕石」の落下事件でした。2013年2月15日の午前9時20分(地方時、日本時間では12時20分)、ロシア西部・ウラル地方のチェリャビンスク州に巨大な隕石が落下したのです。

