ボーッとしているときも脳は働いている
マインドフルネスのもう一つの効用は、脳内に「デフォルト・モード・ネットワーク」が働くようになることだ。
これはユニークな神経回路で、前頭前野や扁桃体といった、脳の各部位をつないで束ねる中心的な役割を果たしている。
通常、人の脳は考えごとをしているときに活発に動く。ところがデフォルト・モード・ネットワークは、そうしたときには活動をせず、ある意味ボーッとして何も考えていないときだけ活発化する特質がある。言わば脳がアイドリング状態のときに活発に活動する神経回路なのだ。
脳はアイドリングをしながら何をしているのかといえば、いままでの経験や知識、あるいはスキルといった情報整理や自分自身の振り返りである。僕はその状態を「閉店後のレストラン」と形容することが多い。客が帰って店が閉まると、ホッと一息つき、スタッフ全員がフロアに集まって、「きょう、こんなお客さんがいて……」「この料理を美味しいという人が多かった」「お客さまへの接客でよかったのは……」などと、その日の振り返りを行う。それによって、情報や感情をシェアする。それがすなわち、「デフォルト・モード・ネットワーク」の働きである。
新しいアイデアが生まれやすくなる
そうした情報整理をすることで、頭がクリアになり、それまでに集めた情報や記憶が結びつきやすくなり、創造性が高まり、新しいアイデアも生まれやすくなるのだ。
マインドフルネスの状態になると、次のようなことも頭の中で整理されてくる。
自分の置かれている状況や、現在の時代の流れ、それに加えて自分自身のこと、たとえば性格、自分が夢見ていることとか、自分が目指している方向、行きたい場所、自分が成し遂げたいことなどをすべて把握した上で、今この状況でどういう判断をすべきか……。