社員の不祥事の責任すべてを企業が背負うべきなのか

筆者はかねて主張している(ただし、多くの人はそれを受け入れようとはしない)のだが、昨年の日テレの不祥事は、メディアやSNSで騒がれているほどには日テレ側に非はない(決して全く非がないと言っているわけではない)。

「セクシー田中さん」の原作者の死の引き金になったのは、SNSでの脚本家、および日本テレビに対するバッシングである。ドラマ制作をめぐるトラブルがあったことは紛れもない事実だが、それだけで原作者の芦原妃名子さんは亡くなることはなかった。つまり、制作者に原作者の死の責任のすべてまで背負わせることはできないのだ。

「24時間テレビ」も同様である。寄付金の着服は系列局の社員個人が行った行為だ。一部のメディアやSNSでは、まるで日本テレビが会社ぐるみで寄付金を着服したかのような叩き方をされたが、それは事実と異なる。

欧米で同じ事件が起きたとしたら、企業側は「自分たちは被害者だ」として、横領を行った社員を刑事告発したり、訴訟を提起したりしただろうし、企業側の責任が問われることもなかっただろう。

日本テレビは謝罪をして再発防止策を発表した。しかしながら、現実問題として系列局の社員を監視して、横領行為を事前に完全に防ぐことは、はたして可能なのだろうか?

社長から説得力のある説明はなかった

フジテレビの場合は、メディア報道がおおむね事実であったと仮定すれば、同社の社員が直接問題に関与していたことになる。さらに、その問題を経営者も把握していながら、根本的な対策を講じてこなかったと読み取れる。

フジテレビ側は、問題の事案に対して「社員の関与はなかった」と主張しているが、記者会見で説得力のある説明がなされていないため、視聴者、およびスポンサー企業の疑念は払拭されなかったと思われる。そのため、一部の企業はCM差し替えという判断を下したのだ。