首都圏の私立・国立中学校の8割以上が何らかの形で出題している「時事問題」。2025年度の入試では、時事問題に何が取り上げられるだろう。プレジデントFamily編集部では時事問題の出題傾向に詳しい3名に、24年の出来事から、出題の可能性が高い5つのトピックを選んでもらった。主に社会科や理科で出題されることが多い時事問題は、配点は高くないものの、合否のボーダーラインを超えるための「数点」になる可能性もある――。

※本稿は、『プレジデントFamily2025冬号』の記事の一部を再編集したものです。

「ニュースの基本」を知っておく

サピックス小学部社会科教科責任者の住田俊祐さんは「地理・歴史・公民からなる主要分野の勉強を深めることに軸足を置きつつ、ニュースの基本を知っておくことが大事です。ニュースそのものについて掘り下げるというよりも、ニュースをきっかけにすでに学習した内容の理解度や受験生本人の考え方などを聞いてくる問題が多い傾向にあります」という。

個別指導塾テスティー塾長の繁田和貴さんは、「2025年は、例えば戦後80年など、○周年が多いメモリアルイヤー。“周年問題”を好む学校は多いですよ。また、“2025”は、九九の合算(1×1+1×2+……9×9)の数であるなど、算数の問題としても作問されやすい」とも。

各校の過去問を出版する「声の教育社」社長・後藤和浩さんはこうアドバイスする。「時事問題は範囲が広大なので、何月までの出来事が出るのか、学校の説明会で聞いてみるといいでしょう。おおよその範囲をすんなり教えてくれたり、『ウチは受験生の負担を減らすために時事問題は出しません』とズバリ答えてくれる学校や担当者もいます」

①新紙幣発行

2024年7月に発行された新しい「日本銀行券」。

一万円札の肖像は、近代日本の産業発展に貢献した渋沢栄一。第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立や、約500社の企業の創設に関わった実業家だ。

五千円札は、日本の女性教育の先駆者である津田梅子。津田塾大学の創設者として知られ、岩倉使節団の一員として渡米し、女性の高等教育に生涯をささげた。

千円札は、細菌学者の北里柴三郎。破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功し、医学の発展に寄与した。北里大学の学祖。

日本円の新紙幣
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです

新紙幣の特徴は、最新の偽造防止技術が導入されたこと。3Dホログラムの立体的な動きの強化、透かしの精緻化、特殊インキによる色変化技術が採用されている。また、ユニバーサルデザインの観点から視覚障がい者が手触りで紙幣の種類を判別できる識別マークも改良され、より使いやすくなった。

デジタル決済が進む中での新紙幣発行という点でも注目された。

「名前だけでなく、顔もしっかり覚えましょう。写真やイラストなど、問題にビジュアルを入れる学校は増えています」(後藤さん)

「新紙幣のユニバーサルデザインにちなんだ出題もあるかもしれません」(住田さん)

「新紙幣に登場する3人の功績は押さえておきましょう」(繁田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【キャッシュレス】

近年、紙幣や小銭を準備しなくてすむクレジットカードやスマホでのバーコード決済など、キャッシュレスでの支払いが普及している。「今回発行されたものが最後の紙幣になるという声もあります」(後藤さん)


【北里柴三郎】

「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎はドイツ・ベルリンから帰国後に、福澤諭吉の支援を受け、慶應義塾大学医学部の初代学部長に就任したほか、私立伝染病研究所も創設。「2020年から猛威を振るった新型コロナをはじめとする感染症対策の礎を築いた人でもあります」(繁田さん)


【図柄】

表面の人物だけでなく、裏面に描かれているものにも要注目だ。一万円札は東京駅丸の内駅舎、五千円札は藤、千円札は葛飾北斎の「富嶽三十六景」の一つ「神奈川沖浪裏」。細かい描写も偽造防止の一環。「かつて渋沢栄一が紙幣の肖像の候補になったものの最終的に選ばれなかった理由の一つとして、偽造防止に役立つ『ひげがなかったこと』があるといわれています。現在は偽造防止技術も発達し、ひげの有無や性別に関係なく採用されるように」(住田さん)