②能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県の能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生。輪島市や志賀町で震度7、珠洲すず市などで震度6強を観測した。

「能登地震」と日本語で書かれたニュースの見出し
写真=iStock.com/y-studio
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気象庁は大津波警報を発令(11年の東日本大震災以来)。その後も揺れが続き、建物の倒壊、道路の寸断、火災の発生など、甚大な被害が発生した。この地震での直接的な死者は227人、避難所などで体調を崩して亡くなる災害関連死も150人以上に。

この災害への対応として、自衛隊、警察、消防による救助活動に加え、ヘリコプターや船舶を活用した物資輸送、避難所の設置と運営、医療支援チームの派遣などが行われた。ただ、山崩れなどで道路が寸断され迅速な支援が困難なうえ、過疎化と高齢化が著しい地域だったこともあり、被害の規模が大きくなった。

「災害が多い日本では、自然災害の問題は毎年出ます。こうした事態に直面したときに『あなたならどうするか』を受験生に問う学校も少なくありません」(住田さん)

「どこで起こったのか、能登を含む北陸地方の地図で位置関係を確認しましょう」(後藤さん)

「P波、S波、マグニチュード、震度などの関連用語と意味はしっかり理解しておきましょう」(繁田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【過去の震災】

「震度7」を観測した地震は、1995年1月の阪神・淡路大震災、2011年3月の東日本大震災、16年4月の熊本地震、18年9月の北海道胆振東部地震などがある。「今回の地震は夕方に発生しましたが、(1923年の)関東大震災は昼時で食事を作っている家が多かったから大規模な火災が起きたなど、地震発生の時間帯と被害の関係を問う出題も予想されます」(後藤さん)


【高齢化社会】

「輪島市や珠洲市など、被災した地域では65歳以上の高齢者が約半数(全国平均では約29%)でした」(繁田さん)。能登には古い耐震基準で建てられた家屋が多く、耐震補強が遅れていたことも被害拡大の要因だといわれる。


【伝統工芸品】

「この地震では伝統的な産業も打撃を受けました。輪島市では“輪島塗”の多くの工房や職人が被災しました」(繁田さん)。また、日本海を望む傾斜地に1000枚以上の田んぼが広がる「白米千枚田」と呼ばれる棚田にも多くの亀裂が走った。

③「円安」と「物価上昇」

円安とは、日本の通貨「円」の価値がアメリカの「ドル」に対して下がること。

例えば、1ドルと交換できるのが100円から150円になると、50円分価値が低くなる。以前は1ドル=100円以下という円高の時期もあったが、2022年から円安傾向に。24年は一時1ドル=160円を突破するまでに円安が進んだ。

円安になると、国民の生活はどうなるか。顕著なのは、外国からの輸入物価が上昇すること。

そのため、輸入依存率の高いエネルギー(ガソリン、電気・ガスなど)や食品(小麦製品、油脂類、加工食品など)の価格に影響が出る。

物価上昇で商品の値上げが増加する一方、中小企業を中心とした社員などの賃金は伸び悩んでいる。政府は物価高騰対策や企業への賃上げ促進策を展開しているが、家計のやりくりに苦しむ家庭が増えている。

「物価高になると、あなたの貯金の価値は上がるか下がるか」を考えさせるような問題が出そうです」(繁田さん)

「円安だとなぜ外国人観光客が増えるのか、それも考えておきましょう」(後藤さん)

「サピックスが今回調べたところ、中学の先生が受験生に知っておいてほしい時事テーマの1位が『円安と物価上昇』でした(2位はアメリカ大統領選、3位は少子化問題)」(住田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【インバウンド】

円安でますます増えたのが訪日する外国人観光客(インバウンド)。経済を活性化させる半面、オーバーツーリズム(過度な観光地化によって、地域住民の生活環境などに悪影響を与える状態のこと)などの問題も発生しており、利点・欠点がある。「難関校では、観光税をとったり入場料を上げたりするほかに、観光地の混雑を軽減させる方法を受験生に考えさせる問題も見られました」(住田さん)


【物流2024年問題】

2024年春からトラック運転手の時間外労働に関する規制が強化されたことで、運送業界で人手不足が深刻化。「スーパーへの生鮮食品の配送の遅れなどが生じ、物流コストもアップ、最終的に食品価格が上昇しました」(繁田さん)


【戦争と物価】

物価高の傾向は2021年以降、コロナ禍からの経済活動の再開による需要の回復などから始まり、22年2月からのロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにさらに上昇。続く23年10月からのイスラエルとパレスチナ(イスラム組織ハマス)の衝突は、中東から輸入する原油価格を押し上げ、日本の物価上昇率を一段と上げた。「アラブ人とユダヤ人の対立、国連の平和維持活動などは押さえておきたいところです」(後藤さん)